幻と思われていた「2010」が現存していた!
このような経緯から、Qi(キューノ)とU(ユー)はごく稀に中古車として市場に現れるが、完全なショーモデルとして作られた「2010」とモダンタイムズ改めQQ(ナインナイン)は、世の中に出回ることはないだろうと思われていた。
だがしかし。われわれの目の前にあるのは、紛れもないチョロQモーターズの「2010」である。オーナーは他の記事でもそのコレクションを紹介している水口 雪さん。埼玉で動物病院を営む水口さんは、この他にも多数の原付カーなどを所有する「小さいクルマ・コレクター」でもある。
もともとキューノのオーナーだった水口さんは数年前、当時2台のみが制作された「2010」が現存することを知る。愛車のルーツでもある「2010」を手に入れたいと思った水口さんは関係者と交渉。その熱意にほだされたかたちで、ついに「2010」を手に入れたのである。
今年めでたくナンバー取得したばかり
2002年の発表会以来、約20年にわたり倉庫に眠っていたという「2010」は、各部に傷みが見られ不動状態にあった。水口さんは全てのバッテリーを新品と交換、破損箇所の修繕など、自らの手でレストアを行い、2023年に晴れてナンバーを取得したのである。
劣化が進んで使えなくなっていたステアリングホイールを交換、灯火類をLED化、電圧計の追加、ホイールキャップはムーンディスクにするなど、一部に施されたカスタム以外は基本的に2002年のデビュー時の姿がキープされている。
* * *
えてして日本の自動車メーカーは、経済的合理性を重視するあまり自社の過去のレガシーを顧みない傾向が見られたが、今から約20年前に「日本最小の電気自動車メーカー」が世に問うたユニークなコンセプトカーもまた、歴史の波間に消えかかっていた。しかし、ひとりの熱心なマイクロカー愛好家の手によって奇跡の復活を遂げたのである。それは日本自動車史の傍流を検証するうえでも、慶事といえよう。