ミケロッティが手がけたボディ
それが今回のRMサザビーズのオークションに出展された、このフィアット600ベルリネッタ・モンテローザというわけだ。リアエンジンの大衆車である600をベースにしたこのシリーズは、1956-1957年にかけて製作された丸みを帯びた前期型の「ベルリネッタ」と、1958-1959年に製造された直線基調の後期型「グランルーチェ」に分けられるが、今回出展されたのは1958年のグランルーチェの方である。ベルリネッタ、グランルーチェ共にデザインを担当したのはかのジョヴァンニ・ミケロッティで、ちいさなフィアット600をベースにしながら精一杯の「スペシャル感」を演出している。
スイス在住の自動車コレクター、ダニエル・イゼリ氏のコレクションから放出された素晴らしいコンディションのフィアット600ベルリネッタ・モンテローザは、果たして2万7600スイスフラン(邦貨換算約447万1000円)で落札され、次のオーナーの手に渡った。
戦後間もない1946年に生まれ、戦後復興が軌道に乗り始めた1961年には歴史の舞台から静かに消えていったカロッツェリア・モンテローザ。それは戦後の混乱期を経て大メーカー自らが、自社製品に数多くのバリエーションを展開できるようになっていった1950年代後半までのわずかな期間に花開いた、もうひとつの”イタリアのカロッツェリア”の物語。そんな時代を現在に伝える縁(よすが)がこの小さなクーペなのだ。