ビートル・ベースだけでなくNSUベースのスポーツカーも
PSストレイジを取材した翌日はベルリンまで足を延ばしてドイツ技術博物館を訪れました。黎明期のダイムラー「レイトワーゲン」やベンツの「パテントワーゲン」から最新モデルまで、そしてマイクロカーや競技車両まで幅広いモデルが収蔵展示されていましたが、マニアックさではちょっと物足りなかった、と言うのが正直なところでした。
その翌日にはヴォルフスブルクに向かい、フォルクスワーゲン自動車博物館とアウトシュタットを取材しました。この2つの博物館は2009年の博物館「事始め」で取材していましたが、ハードディスクが壊れて写真を失っていたために「撮り直し」したくて再度の訪問となった博物館で、当時と同じく朝一番でフォルクスワーゲン自動車博物館を取材し、その後アウトシュタットに向かう、というスケジュールに。そんなフォルクスワーゲン自動車博物館で初めて出会ったスポーツカーがプーマのクーペGTEとロボモビル、そしてギア・イーグル・クーペの3台でした。
プーマのクーペGTEは、ブラジルの自動車メーカーであるプーマが、フォルクスワーゲンの現地法人、フォルクスワーゲン・ド・ブラジルが生産していたフスカ(Fusca=ビートルのブラジル版愛称)のコンポーネントを使って誕生したスポーツカー(スポーツクーペ?)で、いかにもスポーツカー然としたFRP製のボディは、デザインも含めて完成度が高く息の長いヒット商品となっていました。
ロボモビルもフォルクスワーゲンのフラット4エンジンも含めたフロアパンに、FRPで一体成型したボディカウルを架装したモデル。ノーズから抑揚の効いたラインで構成されていますが、個人的には、ガルウイング式ドアのサイドウインドウが大きすぎてラインが破綻しているよう感じられました。それでもFRPのメス型と並べられていて、存在感は圧倒的でした。
もう1台、ギア・イーグルのクーペもフォルクスワーゲンのフロアパンにオリジナルのボディを架装したもので、ギア……カルマンとジョイントして「カルマンギア」を生み出したトリノのギアとは異なり、こちらはスイスのイーグルに本拠を構えていたギア・イーグル(Carrosserie Ghia S.A., Aigle)製でジョバンニ・ミケロッティがスタイリングを手がけて軽快なスポーツクーペに仕上がっていました。
ヴォルフスブルクからデュッセルドルフに向かって週末にクラシック・デイズを取材し、その翌週に訪れたボーデンセ湖畔にほど近いボーデンセ・カー&トラクター博物館で「コラーニGTロードスター」に、そしてシリンダーハウス博物館では「トゥルーナーRS」に初めて出会うことに。
コラーニGTロードスターは文字通り、ルイジ・コラーニがデザインしたロードスターで、ガラス繊維で強化したポリエステル樹脂(FRP)で成形したボディを、フォルクスワーゲンのフロアパンに架装したもの。車両重量が550kgとビートルに比べて約170kg軽いのが大きな特徴でした。
一方のトゥルーナーRSはNSU「1200C」のフロアパンにNSU「TT」の1.2Lエンジンを搭載したものでFRP製のボディは鋼製のサブフレームに取り付けられたうえでフロアパンにボルト止めされていました。NSU 1200Cのフロアパンを流用していたために、ミッド・エンジン・レイアウトではなくリア・エンジンでしたが、スタイリングはミッドシップのスーパースポーツに通じるものがあったのです。ちなみにフロントウインドウはポルシェ「904」のものが転用されていましたが、今回出会った中では一押しの1台となりました。