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「じゃない方」のフィアット「600」が570万円!「セイチェント」の価値が見直され始めたので買うなら今です

「じゃない方」のフィアット「600」が570万円!「セイチェント」の価値が見直され始めたので買うなら今です

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TEXT: 武田公実(TAKEDA Hiromi)  PHOTO: 2023 Courtesy of RM Sotheby's

潮目が変わった……? アバルト並みの高価格で落札!

2023年の「St. Moritz」オークションでは、スイス・シュヴィーツ州フライエンバッハに本拠を置く「イセリ・コレクション」から出品された多くのクラシック・フィアットたちが、華やかな高級クラシックカーたちの中にあって異彩を放っていた。

ここでご紹介する「セイチェント」ことフィアット600について、RMサザビーズ欧州本社が公開している公式WEBオークションカタログには、これまでの来歴については記されていないながらも、1959年12月31日にフィアットの故郷トリノにて初登録された個体であることだけは判明しているようだ。

すなわち「D」のつかない初期モデルの600で、直4 OHVエンジンの総排気量は633ccの時代。4速マニュアルのトランスミッションとともに、リアエンドに配置される。

またドアが前開きであるのはもちろん、最初期型と同じくヘッドライトは小径ながら、そのベゼルはメッキされた立派な作りとなっていること、あるいはライトグリーンのボディカラーや、インテリアが2トーン仕立てとなっていることも、600Dに移行する直前の生産モデルであることを示すディテールとして正確に保持されている。

もちろん60年を超える車齢を思えば、レストアが施された経歴があるのは当たり前のことではあるものの、いずれの時期のオーナーが行った修復であるかは明らかになっていないようだ。

くわえて今回のオークション出品に際しては、日本のJAFに相当する「アウトモービレ・クラブ・ディタリア(ACI)」発行の「エストラット・クロノロジコ(車両年譜)」と、オリジナルの「カルタ・ディ・チルコラツィオーネ(車両登録証明書)」が添付されていたとのことである。

この日の競売に向けて、RMサザビーズ欧州本社は出品者であるイセリ・コレクションと協議した結果、1万2000スイスフラン~1万4000スイスフランという、アバルトでもないセイチェントとしてはきわめて順当なエスティメート(推定落札価格)を設定。さらに今回の出品を「Offered Without Reserve(最低落札価格なし)」で行うことを決定した。

そして迎えたオークションでは、「最低落札価格なし」の賭けがみごとにビンゴ。競りにさえ勝てば確実にゲットできることから会場の空気が盛り上がり、終わってみればエスティメート上限を2倍以上も上回る3万4500スイスフラン、日本円に換算すれば約570万円という、ひと頃であればアバルト版セイチェントにも手の届くような高価格で落札されるに至ったのだ。

こうしてみると、前世紀末ごろまでのクラシックカー市場ではチンクエチェントの陰に隠れていた感もあったセイチェントながら、ようやくその歴史的な価値と魅力にスポットライトが当てられるようになったようにも感じられる。

いずれにせよ、チンクエチェントと同じく、イタリアをはじめとする欧州のスペシャリストではパーツのストックも豊富なので、これからも保有しやすいイタリアンクラシックの代表格といえるだろう。

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  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 1967年生まれ。かつてロールス・ロイス/ベントレー、フェラーリの日本総代理店だったコーンズ&カンパニー・リミテッド(現コーンズ・モーターズ)で営業・広報を務めたのちイタリアに渡る。帰国後は旧ブガッティ社日本事務所、都内のクラシックカー専門店などでの勤務を経て、2001年以降は自動車ライターおよび翻訳者として活動中。また「東京コンクール・デレガンス」「浅間ヒルクライム」などの自動車イベントでも立ち上げの段階から関与したほか、自動車博物館「ワクイミュージアム(埼玉県加須市)」では2008年の開館からキュレーションを担当している。
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