メルセデス・ベンツの歴史的傑作なコンパクトと評価の高いW201
190E 2.5 16 Evo.II DTMは、メルセデス・ベンツのコンパクトレンジを受け持っていた「W123」(Eクラスの前身)の弟分として1982年に登場した「W201」(車名としては190E)がベースとなっていました。W201には当初、直列4気筒2Lシングルカムのみがラインアップされていました。やがて1.8Lや2.3L、2.6Lとエンジンのバリエーションが増えていきます。
そして翌1983年には新たに直列4気筒2.3Lのツインカム・ユニットが追加設定されています。これは既存の2.3Lユニットのブロックに、レーシングエンジンの開発で知られた英国コスワース社で開発したツインカム16バルブヘッドを組み付けたもので、車名も190E 2.3-16と名付けられていましたが、やがて1988年には2.5Lに排気量が引き上げられた190E 2.5-16へと進化しています。
グループAレースに参戦するためにはグループAとしてのホモロゲーション(車両公認)を受けることが必要ですが、1989年に190E 2.5-16をベースに190E 2.5-16エボリューション、通称「190E 2.5-16 Evo. I」が登場し500台を生産してホモロゲーションを獲得しました。
エンジンがチューニングアップされていましたが外観的には、装着した太いタイヤを収めるためにオーバーフェンダーが装着された程度でベースモデルとの差は大きくありませんでした。レースでも苦戦が続いたため、1990年にはさらに進化させた190E 2.5-16 Evo. IIを開発し、やはり500台生産の規定をクリアして登場しています。
富士スピードウェイの「箱車の祭典2023」に登場した190Eは、そんな190E 2.5-16 Evo. IIの1台で、AMG Motorenbau GmbH、つまりはメルセデス・ベンツのワークスチームから参戦したクラウス・ルドヴィクが1990年の第13戦、ニュルブルクリンクに持ち込んだ車両そのもの。黒地にシルバーのストライプとKonig Pilsener(ケーニッヒ・ピルスナー。ドイツのビール会社)のロゴが精悍さを際立たせるカラーリングが大きな特徴となっている1台です。
このカラーリングで目立たなくなっていますがボディの空力パーツには大きな力が注がれています。まずはオーバーフェンダー。Evo. Iでは通常の、ホイールアーチに沿った形状でしたが、このEvo. IIではフロントフェンダーはバンパーからフロントドア直前までを覆うエアロキットとなり、リアフェンダーもリアドアからリアバンパーと一体になってボディ後端までを覆うエアロキットとなっています。
また前後のスポイラーも、フロントは通常のバンパースポイラーにフラットに突き出したチンスポイラーが追加され、リアもトランクに載せられたアーチ状の大型リアウイングに加えてトランクリッド後端に整流版を追加するなど、空力効果を狙ったものとなっています。エンジンパワーに関してはEvo. I の230psからEvo. IIのレース仕様では最終的に370ps以上を絞り出したと伝えられています。