倉庫で朽ちかけていたプロトタイプをレスキュー
この「QQ(モダンタイムズ)」のオーナーは水口 雪さん。この他にも多数の原付カーなどを所有する「小さいクルマ・コレクター」で、本職は埼玉で動物病院を営む獣医師さんである。もともと「Qi(キューノ)」のオーナーだった水口さんは数年前、当時発表会で展示された後にタカラの倉庫で眠ったままになっていた「QQ(モダンタイムズ)」と「2010」が現存することを知る。倉庫で朽ちかけていた2台をなんとかレスキューしようと水口さんは関係者と交渉。その熱意が先方にも伝わり、ついに2台のプロトタイプを手に入れるのである。
水口さんは入手後にさっそくレストアを開始。バッテリーをはじめとして多くの消耗部品を交換し、傷んだボディや内装も修繕しレストアは無事完了。今年2023年に入ってナンバーも取得し、晴れて公道走行可能な状態となった。
「発表会用に製作されたワンオフのショーモデルだったのでドアミラーやワイパーなども備わっていませんが、できるだけ当時の状態をキープしようと考え、ホイールキャップ以外はほぼオリジナルです」
コミカルなパーソナルEVを夢見た時代の生き証人
初回限定で市販されたQi(キューノ)は予約完売となるなど、玩具メーカーが手がけた電気自動車として大きな話題となったQカーだったが、需要が一巡した後は販売台数が頭打ちとなり、チョロQモーターズは2004年にはその生産を終了。ほどなくして「自動車製造業」から撤退していった。
バブル景気崩壊直後に生まれ、電気自動車がひろく普及する前に歴史の波間に消えていったQカーと呼ばれた小さなBEV。じつはQカーには、イギリスのスポーツカー・メーカー「ケータハム」とのコラボによる「Q-CAR 7(キューカーセブン)」など、実在するクルマをチョロQ化した文字通り「運転できるチョロQ」の生産なども予定され、予約受付も始まっていたが、それらの計画もキャンセル。実車をデフォルメしたQカーが、その元ネタとなった本物のクルマと同時に公道を走る……そんなコミカルなシチュエーションも見果てぬ夢となった。
そんな時代の証人が一堂に会する水口さんの「Qカー・コレクション」は、まさに貴重な存在である。
■「マイクロカー図鑑」記事一覧はこちら