あえて小排気量+スーパーチャージャーで勝負
VWでは大なり小なりローダウンするカスタムが一般的で、しかもレースに挑戦するとなれば高年式の大排気量エンジンを積んだり、排気量アップして馬力を追求する人が多いのだが、香取さんの1970年式ビートルは1200ccのスタンダードモデルで、排気量も車高もノーマルのまま。リアのエンジンルームに空気を入れるために装着されたリアクオーターのエアスクープが目を引くが、それとホイール&タイヤ以外は、ほぼ純正のスタイルをキープしている。
香取さんのビートルの最大のポイントは、この非力と言われる1200ccフラット4エンジンにスーパーチャージャーを組み合わせたことにある。スバル「サンバー」用のアイシン製AMR300スーパーチャージャーを入手してVWスペシャルショップ「bugmax」(BIGPOWERの後継店)に持ち込み装着してもらい、カムシャフトをENGLE製W100に換装。トランスミッションは純正のままだ。
ターボではなくスーパーチャージャーを選択したため、低回転から安定して過給圧を得ることができ、スムーズな加速は街乗りで楽しめるのはもちろん、ドラッグレースで正確なタイムを狙うのにも打ってつけというわけだ。
また、アメリカでキャルルック旋風がVWカスタムを席巻するより前に存在した「ガッサー(Gasser)」と呼ばれるスタイルをリスペクトしている点も見逃せない。
家族と一緒にドラッグレースを楽しんでいく
その名も「TINY GASS」と名づけたビートルでVWのドラッグレースに参加し続け、ついにダイヤルイン・クラスでの優勝をもぎ取った香取さんに、勝利の秘訣を聞いてみた。
「愛する嫁がタイムを決めて申告してくれるので、それが決め手ですね。壊さずレースして楽しんで、壊さず帰るように心がけてます。歳をとっても家族で楽しんでいきたいですね。次の目標はトップエリミネーター(各クラスの勝者が競うダイヤルイン方式のトーナメント)を獲りたいと思います」
毎回、ドラッグレースに家族が一緒に来て声援を送ってくれた結果の優勝。小排気量+スーパーチャージャーの組み合わせは、クルマへの負担も最小限で、コストを抑えながらレースを楽しめるというメリットもありそうだ。
なお香取さんの本業は、つくば市の筑波大学近くに所在する「Cafe4(カフェヨン)」というハンバーグ屋さんだ。肉の良さを存分に味わえるハンバーグは衝撃的な美味しさなので、つくばに行くことがあれば寄ってみることをオススメする。