ビートルより大きく重いワーゲンバスでドラッグレースに挑戦
ドラッグレースというと大排気量のアメリカン・マッスルカーを想像する人も多いだろうが、じつはRRレイアウトで軽量なクラシック・フォルクスワーゲン(以下VW)で楽しんでいる人も多い。商用車生まれのマルチパーパスカーとして今なお世界中で愛される「タイプ2」(通称ワーゲンバス)で、ドラッグレースに挑戦し続けているオーナーを紹介しよう。
クラシックVWで楽しむスタートダッシュ競争
かつて日本では「ゼロヨン」とも呼ばれていたドラッグレースは、アメリカ発祥のモータースポーツ。1/4マイル(約400m)の加速タイムを競うシンプル・イズ・ベストなスタイルながら、参加クラスの選択や、2台並んでスタートシグナルを待つ際の駆け引きなど、マシンのチューニングだけではない奥深さを持っている。
2023年夏に開催されたクラシックVWのドラッグレース「VW Drag In 16th」は、モビリティリゾートもてぎのオーバルコースのホームストレートを使い、1/4マイルではなく1/8マイル(約200m)でタイムを競うハーフドラッグレースで、総勢55台のVWがエントリーした。
プロスタート形式でナンバーの有無を問わず、スリックタイヤの使用が認められるのが「プロクラス」で、さらにタイムごとに分かれている。そのうち、1/8マイル8.49秒~8.00秒の「PRO GAS」クラスには7台がエントリーしたが、ビートルの群れの中に、ずんぐり大柄なワーゲンバスの姿が。VWのドラッグレースでは常連といえる、“ミドバス”さんの1967年式タイプ2、13ウィンドウだ。
約2.3リッターに拡大したエンジンは227馬力を発揮
いすゞ「フローリアン」やB310「サニー」、そして何台もの「サニトラ」を乗り継いできたミドバスさんだが、1963年式ビートルをキッカケにクラシックVWの世界に足を踏み入れたとのこと。そしてドラッグレースに初挑戦したのは2012年の仙台ハイランド・ジャパンドラッグレースウェイでのことで、東北地方の復興支援も兼ねた大会だった。
現在ドラッグレースに挑戦し続けているのは、自家塗装したというグリーンボディの1967年式ワーゲンバス。しかしクラシックVWはRRレイアウトでドラッグレース向きとはいえ、車重およそ800kgのビートルに対し、ワーゲンバスのデラックス仕様は約1100kgと、重量のハンデがかなり大きい。
その重さを克服すべく、空冷水平対向4気筒エンジンはボア94mm×ストローク82mmの2276ccとして、ヘッドはCBパフォーマンスのオーバルポート、クランクシャフトとコンロッドもCBで、ピストンはマーレー。カムシャフトはコーヘーマシーンのKM300で、マフラーもコーヘーマシーンによるチタン製φ45mmを装着。キャブレターはWEBER 48IDAで、イグニッションにはWAKO CDIをチョイス。最高出力は227psをマークするに至った。
巨大なパワーを受け止めるべく、トランスミッションはVWケースにHパターンのドグミッション、ドライブシャフトはショートアクスルを強化してあり、ZFのLSDも装備している。ナロードした足元は、フロントがボガード製ホイールにタイヤはM&Hフロントランナー、リアはウェルドレーシング製ホイールに7インチスリックタイヤという組み合わせだ。