ジョルジェット・ジウジアーロが手がけた冴えたスタイル
4気筒/1240ccのFIREエンジンは60ps/9.8kgmで、1750〜4850rpmで最大トルクの90%以上を発生するというもので、街中はもちろん高速走行も必要にして十分だった。ただし組み合わせられるのがCVTだったためアクセルワークはコツを掴む必要があり、無闇にアクセルを踏み込むと、いわゆるかつてのCVTで言われたラバーバンドフィールを味わうことになり、それが少々もどかしかった。一方でサスペンションストロークがたっぷりとしているおかげで乗り心地はすこぶる快適で、コーナリングでクルマがロールした際のロードホールディングも確かで安心感が高く、こうした何気なく走りの素性が高いところはフィアット(=欧州コンパクト)の魅力だなと改めて実感した。
それからもうひとつ、初代プントの魅力のひとつとして忘れてはならないのがジョルジェット・ジウジアーロが手がけた冴えたスタイルだ。何を隠そう物心ついてミニチュアカーのコレクションを始めた頃から(!)ジウジアーロのファンだった僕は、それまでも自分のクルマとしていすゞ「117クーペ」を皮切りに、いすゞ初代「ピアッツァ」、VW初代「シロッコ」などを乗り継いだ。なので初代プントでジウジアーロにまた乗れることをおおいに楽しんだ。
同じフィアットのコンパクト系でジウジアーロはパンダやプントの前身のウーノも手がけていたが、それらともまた違うプントの“作風”は、年代が異なるとはいえ彼のセンスとアイデアの引き出しの豊富さを思い知らさられたもの。とくにショルダーから下に微妙なインバースを設け、それをリアまで回したところや、縦長のリアコンビランプをピラーに沿わすなどし無駄なパーティングラインを徹底的に整理していたところなど、とてもさり気ないがデザイン上の味わいどころだった。プントは庶民のための足グルマだったが、同じ庶民ながら、イタリア(と欧州)の人たちはこんなに洒落たクルマが身近にあって羨ましいなぁ……と思ったものだ。