M3ツーリングは最強の乗用車
BMW M社が手掛けるハイパフォーマンスモデルのM3に、初のツーリングが登場しました。同じS58エンジンを搭載するBMWアルピナ B3やセダンのM3と比べつつ、その走りをレポートします。
ラグジュアリィ化でアルピナに近づいたツーリング
筆者の中でDセグメント最高のグランツアラーはBMWアルピナ B3セダンの前期モデルだ。何度も同じことを言っているけれど、やっぱり繰り返したい。ロールス・ロイスが3シリーズを作ったらこうなった、と言われてもおかしくないほど上質なドライブフィールのリムジーネだった、と。
同じ3シリーズベースのアルピナでもD3Sとなると少し雰囲気が違った。エンジン重量も違うのでアシのセットがどうやら異なっている。筆者にはB3が、セダンもツーリングもしっくりきた。ちなみにセダンとツーリングでも、当然ながら、アシのセッティングは違う。セダンの方が断然に良い。
しかもB3のエンジンはSだ。つまりM3と同じ型式(S58)を持つ心臓を、少しだけチューニングを変えて積んでいた。70年代にBMWのレース用ツーリングカーを鍛えたのはアルピナで、そのツーリングカーが後々のM社誕生の布石となったのだから、ここらで軽く恩返しというわけだった。もっともその後、もっとでっかい恩返し、というか、BMWがアルピナのビジネスを統括することになると発表された。電動化時代を見据えてブランド存続を賭けた決断である。
そんな未来が見えていたのだろうか。それまで絶妙にベースモデルの被りを避けてきたMとアルピナだったが、ついにその“均衡”が崩れた。M3ツーリングが登場したのだ。
これまでDセグメント(3&4シリーズ)のMといえば、M3(セダン)、M4(2ドアクーペ)、M4カブリオレだった。一方でアルピナはというとセダンとツーリング、そして4ドアクーペのグランクーペがベースだった。スタンダードスタイルの3シリーズセダンベースこそ両ブランドで出していたものの、派生モデルに関しては見事に住み分けていたのだ。
買収発表後にM3ツーリングデビュー。なんというタイミングの良さか。もっともBMW MとしてもM3ツーリングは是非とも投入したいモデルだったに違いない。相次いでM5ツーリングの復活も宣言したから、今、ステーションワゴンモデルはある種のスペシャリティカーとして再び注目されているということなのだろう。
アルピナはいち早くターボエンジンやシフトスイッチ付きハンドルを採用するなど、常に最先端を走ってきた。その乗り味は究極のBMWだった。かたやMはモータースポーツのM。その走りは常にスポーツカーライクだった。近年、Mのラグジュアリィ化に伴って、両者は接近している。M3ツーリングなどはさしずめその決定的なモデルだと言っていい。