アテーサE-TS修理の次なる一手
R35純正エアフロ/インジェクター/点火コイルの流用など、他に先駆けてオリジナルメニューを展開してきた『RiO(リオ)』。本誌168号でアテーサE-TSのリペア法を紹介したが、よりリーズナブルな新しい手法を確立したという。どのような手法なのか紹介する。
(初出:GT-R Magazine 172号)
安価で純正と置き換え可能な救世主
GT‒Rの要とも言える前後トルク配分式の4WD「アテーサE‒TS」。後輪のスリップを感知すると油圧で前輪にもトルクを伝えるという優れたシステムではあるが、年数の経った第2世代GT‒Rではトラブルを抱えている個体も少なくない。
もっとも多いのが油圧スイッチの故障。トランスファーに油圧を掛けるためにアキュームレーターと呼ばれるタンクを備えているのだが、そこに圧を掛けるためのスイッチがヘタることで、上限の数値(3.8Mpa)まで内圧を高めることができなくなってしまうという。
そうなると、メーターパネル内のフロントトルクメーターは作動しているのに、実際はほとんど前輪にトルクが掛かっていない「ただのFR状態」になりかねない。
R32/R33/R34ともにE‒TSのシステムはほぼ共通で、前述した油圧スイッチも共通品。だがしかし、純正部品はすでに製廃……。
そこで、広島県廿日市市の『リオ』では代替えの油圧センサーに置き換えるシステムを考案。
「以前にも製作していたのですが、それは実験的なシステムでした。社外品のセンサーでもアテーサE‒TSが作動するかどうかを試す意味で製作したのです。ただ、代替品として使用したセンサーは高価かつ多機能な製品で、E‒TSを動かすにはオーバースペックと言えます。そこで今回、別の油圧センサーを使用できるようにオリジナルの回路を製作し、R32/R33/R34に加えてステージアの260RSにも装着して動作確認ができました」と語るリオの大西正夫代表。
独自の回路で油圧を制御!
新たに用いるのは某輸入車にも採用されている油圧センサーで、純正の油圧スイッチ同様、アキュームレータータンクの内圧ヒステリシス(下限2.8Mpa〜上限3.8Mpa)を正確に測定するための回路(コンパレーター)を自作。雨水や泥などによる汚れを避けるため、センサーと回路をトランク内に移設している。
今回撮影したのはBCNR33。E‒TSユニットは運転席側のリアフェンダー内側下部に装着されている(R34も同位置)。リアデフ上に設置されているR32とステージア260RSに比べると汚れにくい場所にセットされているが、長年の走行でサビや汚れが目立つ状態に……。正直、環境の良い場所とは言いにくい。
今回用いているセンサーは、メーカー純正としても採用されている製品で耐水性や耐熱性があるとはいえ、念のため汚れることのないトランク内へと移している。
リオ考案のアテーサE‒TS用オリジナル油圧スイッチユニットは、取り付け工賃込みで9万8000円+税というリーズナブルな価格。
「E‒TSフルードのラインや配線などを室内へに引き込む作業もあるので、キット単品での販売はしない予定です。申し訳ないのですが、装着はご来店いただいた上で作業できる車両に限らせていただきます」と大西代表。
なお、純正スイッチ自体が壊れている(ON/OFFできない)場合は4WDの警告灯が点灯するため把握できるが、厄介なのが前述した「ヘタリ」があるケース。距離の伸びたR32では本来の圧が掛けられていないケースも多いという。気になる方は同店に相談してほしい。
(この記事は2023年8月1日発売のGT-R Magazine 172号に掲載した記事を元に再編集しています。価格などは発売日時点のものとなり、現在とは異なる場合があります)