フラッグシップらしい「静けさ」としなやかな走り
試乗車は、「Q8 55 e-tron quattro S line」だった。フラッグシップモデルだけあって、風切り音や、路面からのノイズなども低く抑えられており静粛性が高い。この車両には静粛性を高めるためのアコースティックガラスや、その空間を活かすBang&Olufsenの3Dサウンドシステム(16スピーカー)などをセットにしたオプション装備の「サイレンスパッケージ」(オプション価格30万円)が装着されていたが、予算が許すならぜひとも選びたい。
全モデルに車高と減衰力を自動調整するアダプティブエアサスペンションを搭載しており、またエアスプリングのチューニングが見直されており、乗り心地はとてもしなやか。このエアサスを活かし新型では新たに「オフロード」モードも追加されている。そして速度と操舵角にあわせてギア比を変化させるプログレッシブステアリングによって、ボディの大きさを感じさせることなく、ドライバーの操作に対して素直にコーナーを曲がっていく。
パワートレインには前後アクスルにそれぞれ1基ずつ計2基のモーターを搭載するが、通常はフロントモーターを切り離し、リアモーターのみを駆動することで電費をかせぐ。そして、新世代の電動クワトロ(4WD)システムは、アクセル操作や路面状況に応じて自動で前輪に駆動力を配分するのだが、まったく違和感なく瞬時にスムーズにトルクが立ち上がる。ドライブモードは基本的に「オート」でいい。回生のレベルを調整したい場合はステアリングに備わるパドルを操作すれば3段階で調整できる。
アウディはフォクルクワーゲングループにおいて、電動化の急先鋒を担うブランドだ。2026年以降に登場する新型車はすべて電気自動車に、既存の内燃エンジンモデルも2033年を最終期限として段階的に生産を終了するという経営方針を打ち出している。Q8 e-tronは、まさにそのフロントランナーだ。アウディらしい洗練度に磨きをかけていた。