クラシックカーラリー界で、日伊の新たな友好関係が誕生
2023年10月下旬、筆者がイタリア・ボローニャで開催されたクラシックカーショー「アウト・エ・モト・デポカ(Auto e Moto d’Epoca)2023」を訪れたのは、もちろん取材という理由もあった。でも、もっとも重要な目的は、2023年春に沖縄でスタートしたばかりのクラシックカーラリー「ジーロ・デッリゾラ沖縄(Giro dell’Isola OKINAWA)」が、イタリアの名門イベント「ジーロ・ディ・シチリア(Giro di Sicilia)」と姉妹提携を結ぶことが決定し、そのお披露目のプレゼンテーションが当イベントの大型ステージにて行われるにあたって、微力ながらサポートさせていただくというものだった。今回は、予想外に大掛かりなものとなったプレゼンテーションと、それに至るまでの経緯について、お話しさせていただきたい。
イタリアの名門イベントと、日本の新興イベントが姉妹になる
ことのはじまりは、2023年3月4〜5日に第1回「ジーロ・デッリゾラ沖縄」が開催されたことまで遡る。
イタリアの生ける伝説的イベント「ミッレ・ミリア」に端を発する、レギュラリティ・ラン(タイムラリー)形式のクラシックカーラリーは前世紀末から日本にも波及し、現在では国内の津々浦々で開催。観光イベントや、時には町興しイベントとしても人気を博すこれらのラリーでは、美しい景観の中を、参加者おのおのの愛車であるクラシックカーとともに走るというのが最高の醍醐味となっているなかで、とくに「美ら島」沖縄で開催されたジーロ・デッリゾラ沖縄の美しさは格別のものであった。
そこで、筆者もライターとしてその魅力を複数のメディアでお伝えさせていただいたのだが、日本のWEB記事も海外でチェックすることができるインターネット時代の現代において、それらの記事はイタリアの「ジーロ・ディ・シチリア」関係者たちの目にもとまることになった。
「ジーロ・ディ・シチリア」は、同じシチリア島で開催される同名の自転車ロードレースと間違えられることも多いが、自動車レースとしても約一世紀の歴史を誇る名門。クラシックカーラリーとなった今でも、イタリアの自動車クラブや各種イベントを傘下に収めるオーソライズ団体で、クラシックカーの正統性が認められたことを示す「タルガ・ドーロ(Targa d’Oro:ゴールドプレート)」の発行者として知られる「ASI(Automotoclub Storico Italiano)」においても、もっとも重要なイベントのひとつとされている。
また2023年春の大会では「伊香保おもちゃと人形自動車博物館」の館長である横田正弘氏が総合優勝を遂げたこともあって、わが国でも比較的知名度の高いクラシックカーラリーといえるだろう。
ジーロ・ディ・シチリアの主催団体「ヴェテラン・カー・クラブ・パノラムス」会長にして、ASIの上級理事でもあるアントニオ・アウチェッロ氏は、かねてより「日本のイベントとコラボしたい」という要望を持っていたとのこと。そこで、同じく今年の「ジーロ・ディ・シチリア」に出場し、ASI幹部を夫に持つローマ在住の日本人女性、蓑 京子さんが「ジーロ・デッリゾラ沖縄」を見つけ出し、今回の姉妹イベント締結に至ったとのことである。
ちなみに、沖縄でイベント名として掲げられた「Giro dell’Isola」とは、この種のラリーの本場、あるいは聖地ともいうべきイタリアの言葉で「島巡り」を意味するという
そして、同じ「ジーロ」の名を冠すること。さらに、苦難の歴史を乗り越えて独自の文化を築いてきたシチリアと沖縄の共通性も、今回の日伊コラボの大きな理由になったという。