R.S.アルティメットデイが袖ヶ浦で熱く開催!
ニュルブルクリンク北コースのFF市販車の最速記録を何度にも渡り更新したルノー「メガーヌR.S.」や、その弟分の「ルーテシアR.S.」を通じて、日本でも多くのファンに愛されてきた「ルノー・スポール」。今後その名がなくなることとなり、フィナーレを飾るイベント「R.S.アルティメットデイ」が2023年11月25日(日)、千葉県・袖ヶ浦フォレストレースウェイで開催され、フランス本国からもゲストが来日しました。
ロラン・ウルゴン&フィリップ・メリメが来日
ルノー・グループの再編成にともない、「ルノー・スポール」という長年の看板を下ろして、スポーツ系は「アルピーヌ」が後を受け継ぐと発表されたのは2021年のこと。以来、F1チームもアルピーヌになって、ルノー・スポールのファンやオーナーはちょっとやきもきしていたかもしれない。
これまでもルノー・スポールのオーナー向けに、スポーツ走行形式のミーティングは行われてきた。2023年前半から販売されてきた「メガーヌR.S.ウルティム」、つまりLSDまで装備した究極バージョンがいよいよ駆け込み終売の局面とあって、日本市場でもルノー・スポール幕引きの秒読みが始まったといえる。ルノー・スポールにとって、日本は本国に次いで世界で2~3位の販売台数を誇ったほど、長年かけて重要な市場に育った。
前置きが長くなったが、ホットハッチの元祖にして名門、ルノー・スポールの有終の美にふさわしく、2023年11月末の週末、袖ヶ浦フォレストレースウェイで「R.S.アルティメット・デイ」が開催された。300台を超えるルノー・スポールもしくはゴルディーニ、そして新旧のアルピーヌが駆けつけ、走行会形式のみならず、パドックでも趣向を凝らした催しが盛り沢山の1日を楽しんだ。
もちろんフランスからはスペシャルゲストとして、お馴染みシャシー開発者のフィリップ・メリメ氏と、開発テストドライバーとしてニュルブルクリンク北コースで最速記録を樹立し続けたロラン・ウルゴン氏が駆けつけた。
メガーヌR.S.の後席で転がされまくった思い出
個人的には、いよいよメガーヌ第4世代のR.S.が、これで最後かと思うと感慨深かった。日本に上陸したての頃、貴重なサンプル車両でまずはプレス向けに、伊豆サイクルスポーツセンターで同乗試乗会が行われた。そのときは通訳としてリアシートに乗り込んで、メリメ氏もしくはウルゴン氏のドライビング中の解説を、助手席の編集者やジャーナリストに日本語で伝える役回りだった。
なぜ印象に残っているかといえば、リアシートはホールドが甘くて、あの2人の走りではシートベルトをしていても身体が転がる。それを何周も、ルノー・ジャポンのマーケティング・ディレクター、フレデリック・ブレン氏と代わる代わる乗っては、ホントによく転がってどう踏ん張っていいのか分からないと、こぼしていたのだ。おそらく「4コントロール」こと4輪操舵による独特の車体のキレ味もあったと思う。
こちらの難儀をヨソに、ステアリングを握るフランスの2人は、「サイクルスポーツセンターの路面はゴムがのっていなくてグリップ最高!」とか、「コンディションのいい小ニュルブルクリンクっぽい!」と上機嫌で、余裕は残していたようだが3人乗りなのに、まさかのハイペースでコーナーを攻め立てる。とくにメリメ氏のダブルレーンチェンジは忘れられない。「おれの作ったシャシーのスタビリティを見よ!」といわんばかり、約150km/hから1.5車線ほどの横っ飛びを2度3度、繰り返すのだ。リアシートで今日何度目? というぐらい転がされながら、それでも後輪がブレークせず追従しまくるメガーヌR.S.のシャシーに感心させられた。
後に登場したニュル・タイムアタック仕様の「トロフィーR」が、リアシートも4コントロールも取っ払った仕様と聞いたときは、軽量化その他がもちろん理由とはいえ、笑ってしまった。ルノー・スポールのクルマ造りの魅力はそう、一貫して造り手の顔が見えて、本当に走り込むことで完成を期していると感じさせるところにある。しかもルノーの大衆車ベースで日常生活における実用面も、割とこなせてしまう。メディア関係者にもじつは愛車として乗っている人が少なくない。