キャプテンシートは存在しない7人乗りだったイプサム
1990年代中盤に始まったミニバンブームは、それまでどちらかというと人員輸送車という側面の強かった3列シート車を、乗用車感覚で乗ることができるファミリーカーへと変化させており、その先陣を切ったのは1994年に登場した初代ホンダ「オデッセイ」であることは明白だ。
運転のしやすさや税制面での有利さが販売に繋がった
その後、各メーカーもオデッセイに追い付け追い越せの勢いで、さまざまなモデルをリリースしたのだが、その中でもスマッシュヒットを記録したのが1996年5月に登場した初代トヨタ「イプサム」。1997年の販売台数ランキングでは9万2822台を売り、10位のオデッセイを上回る7位という販売台数を記録した。
1620mm(2WD車)と比較的低めの全高に4枚のヒンジドア+テールゲート、3列シートを備えるというコンポーネンツはオデッセイと同様で、オデッセイを意識していたのは一目瞭然だったが、オデッセイと異なる点としては全幅1695mmの5ナンバーサイズで、搭載エンジンも5ナンバーサイズ内に収まる2Lエンジン(とディーゼルエンジン)となっていた。運転のしやすさや税制面での有利さが販売に繋がったと言えるだろう。
シートレイアウトも2列目キャプテンシート仕様は存在せず、すべて2-3-2の7人乗りとなっていたのもイプサムの特徴となっていた。
またイメージキャラクターとして「イプー」というキャラクターが存在し、カタログなどに登場しただけでなく、オリジナルのグッズやステッカー、果ては絵本などが販売されるなど、1車種のキャラクターの範疇を超えた活躍を見せていたのも初代イプサムを語る上で外すことができないエピソードである。
このように好調なスタートを切った初代イプサムであったが、5ナンバーサイズのボディが故に車内が狭いというデメリットがあり、価格もオデッセイとそこまで変わらない(エントリーグレード同士で15万円ほど)にもかかわらず、そこまで質感も高くないという声もあって徐々に販売は失速。
1998年4月のマイナーチェンジのタイミングで、通常モデルには存在しないイエローのボディカラーやサードシートレスの5人乗りのシートレイアウト、ビレットグリルなどを備えた特別仕様車「U.S.カスタム」を追加するなどテコ入れをしたが、残念ながら当初の人気を回復するまでには至らなかった。
結局、2001年に登場した2代目は3ナンバーサイズのボディと2.4Lエンジンとライバルのオデッセイに近いものとなり、大人気モデルとはならなかったものの2010年まで販売されるロングセラーモデルとなったのだった。