今後のさらなる値上がりも間違いなし?
2023年のミュンヘン・オークションは、RMサザビーズにとって大成功のうちに終了したと評価してもよいだろう。全ロットのうち88%が落札され、その総売り上げは1610万2850ユーロ(邦貨換算約26億850万円)。トップセールスは309万8750ユーロ(同5億200万円)で落札された、フェラーリの1973年式「365GTS/4スパイダー」(通称デイトナ・スパイダー)であった。
走行距離はわずか6109km
その売り上げに貢献したモデルの中に、65万7500ユーロ(同1億650万円)という、第5位の落札価格を記録したモデルがあった。それが2011年式のレクサス「LFA」だ。日本製のスーパースポーツにようやくマニアの目が向いてきたことを表す何よりの証拠ともいえた。
ちなみに今回出品されたLFAは、トータルで500台が生産された中で「211」のシリアルナンバーを持つもので、ホワイテストホワイトのボディカラーで塗装された、わずか44台しかない左ハンドル仕様の1台である。
ラインオフは2011年の11月。その後、中東市場向けに日本から輸出されたという記録が残る。ファーストオーナーは、2013年に入手したカタール人で、その後2021年にはスイスで登録。そして2021年9月、このLFAはドイツ・ケルンのトヨタGazooレーシングのファクトリーで、1517.28ユーロ(同24万5800円)の費用で整備を受けている。現在までの走行距離は、わずか6109kmにすぎない。
さまざまなプロトタイプの製作を経て、LFAが正式発表されたのは、2009年の東京モーターショーでのことだった。正式な車名は「Lexus F Sports Apex (LFA)」とされ、日本国内では500台の総生産台数のうち、200台が抽選によって購入できるという、きわめて異例の販売方法が採られたことも記憶に新しい。
またその全500台のうち50台は、さらにサーキット走行にフォーカスした「ニュルブルクリンクパッケージ」として2012年から生産を開始。全生産が終了したのは2012年12月17日のことだった。
LFAは、そのメカニズムでも世界のスーパースポーツに十分対抗できる内容を持ち合わせていた。軽量化と高剛性を確保するためにシャシーやボディ骨格、そしてボディパネルは65%をカーボン製とし、エンジンはヤマハとの共同開発による4.8LのV型10気筒ユニットを560psの最高出力(標準車)でフロント・ミッドシップとした。
組み合わされるトランスミッションはアイシンAI(現在のアイシン)製の6速オートメーテッドシーケンシャルギアボックス(ASG)。シフト時間はシフトタイムスイッチにより、0.2秒から1秒まで、7段階に調節することができる。
ドライブ・モードは、「オート」、「ノーマル」、「スポーツ」、「ウエット」の4タイプ。それによって各種電子デバイスを統合制御するスポーツモード付き車両安定制御システムが、走行中の最適な姿勢変化を実現する仕組みだ。
サスペンションのデザインは、フロントがダブルウィッシュボーン式、リアがマルチリンク式。ブレーキにはカーボンセラミックディスクと、フロントに6ピストン、リアには4ピストンのアルミニウム製モノブロックキャリパーが与えられている。
ホイールは20インチ径のBBS製。タイヤサイズは前後それぞれ、265/35ZR20、305/30ZR20サイズが採用されている。
圧倒的なパフォーマンス、驚異的なドライブトレイン、そしてエキゾチックな構造にシャープなスタイリング。そのすべてが、その神秘性とコレクター性を高めるレクサスLFA。出品車のコンディションを見ても、そしてわずかな走行距離を見ても、その落札価格は十分に納得できるものといえるだろう。今後のさらなる値上がりも、おそらくは間違いのないところだ。