クラッシックの部類に入りつつあるディアブロ
2023年11月4日、RMサザビーズがドイツ・ミュンヘンで開催したオークションにおいてランボルギーニ「ディアブロVT6.0」が出品された。今回はいくらで落札されたのか、同車について振り返りながらお伝えしよう。
アウディによるディアブロの進化は2000年に真骨頂を迎える
1990年代のランボルギーニが、ほとんど唯一生産したモデルといえば、それは5707ccのV型12気筒エンジンをミッドシップに搭載したスーパースポーツ、ディアブロにほかならない。当時のランボルギーニにとって、現在のウラカンやウルスのようなまったく別のクラス、カテゴリーのモデルを生み出すことは経済的にも不可能な話であり、それ以前にランボルギーニは常に会社として存続の危機に立ち向かわねばならない状況だった。ディアブロはそのために用意された唯一無二のプロダクトだったのである。
ランボルギーニの歴史が大きく動いたのは1998年。新たにアウディが彼らの親会社となることが決定した時だった。この時すでにランボルギーニでは、次世代の12気筒モデルの開発がかなりの段階まで進んでいたが、アウディはそれを白紙撤回すると、自らの主導による新たなモデル開発を指示。そのために必要な時間を、ディアブロの延命によって得ることを決定した。固定式のヘッドランプを持つMY99以降のモデルは、すべてアウディの指示によるディアブロ延命策の結果誕生したと解釈しても、それはあながち間違いではないだろう。
そしてアウディによるディアブロの進化は、2000年に誕生したMY00で真骨頂を迎える。その名も「VT6.0」(あるいはシンプルに「6.0」とも呼ばれたそのMY00は、よりスムーズなエクステリアデザインを持ち、前後のフェンダーもよりワイドな造形に。
前後のホイールもこの6.0の登場に合わせて新デザインのものに改められた。だが6.0の最大のトピックは、そのネーミングが物語るとおり、リアのエンジンルームに収められるパワーユニットにこそあった。
V型12気筒エンジンの排気量は5992ccへと拡大され、最高出力は550psの設定に。最大トルクも630Nmという魅力的な数字をスペックシートに掲げていた。組み合わせられるトランスミッションは5速MT。これも当時の公称値によれば、0−100km/h加速は3.9秒、最高速は338km/hを記録した。駆動方式はもちろんVT(ビスカス・トラクション)の称号が示すとおり4WDで、後輪駆動主体型のそれは、必要時には最大で17%のトルクをビスカスカップリングによって前輪に伝えるシステムだった。
オレンジのパイピングが施されたブラックレザーのインテリアが美しいこのモデルは、ディアブロの生産最終年、すなわち2002年にランボルギーニから、スイスの著名なディーラー、ガレージ・ローランド・アフォルターにデリバリーされたもの。
その後スイスのニーレンダーツに在住のファーストオーナーに販売され、2006年にスウェーデンに持ち込まれたのち、2007年から今回の出品者に所有されている。車体のほかに整備記録や請求書、さらに前オーナーのもとで、スイスで定期的に行われていたメンテナンスの詳細が記録されたオリジナルの記録簿など、多くのドキュメントが付属しているのも、このVT6.0の価値を高めている大きな理由だ。
ちなみに走行距離は6万9503kmを指していた。ディアブロVT6.0の総生産台数は、RMサザビーズの調べによれば330台。もはやクラッシックの部類に入りつつあるディアブロ、今回の落札価格は23万ユーロ(邦貨換算約3726万円)。それは今後ディアブロが、さらに貴重なモデルとなることを表すリザルトだった。