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ランボルギーニ「ミウラSV」にまつ毛はあった?「人類の宝」に認定したクルマを「アウト・エ・モト・デポカ」からお届け

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TEXT: 武田公実(TAKEDA Hiromi)  PHOTO: 武田公実

ランチアD23 & D24

ランチアのモータースポーツといえば、世界ラリー選手権(WRC)をはじめとするラリー競技における縦横無尽の活躍が思い出されるが、1950年代前半にはFIA世界スポーツカー選手権で素晴らしい戦果を挙げ、最終的にはF1GPにも挑戦していた。

今回のアウト・エ・モト・デポカにて、ボローニャ・フィエラ(見本市会場)正面エントランスで来場を待ち構えていた「MAUTO(イタリア国立自動車博物館)」の特別展示コーナーに置かれていた「D23」。そして、日本のJAFに相当する「ACI(Automobile Club d’Italia)」クラシック部門の特設ブースに置かれていた「D24」はその時代に製作され、主にロードレースで大活躍したレーシングスポーツである。

第二次大戦前にはアルファ ロメオで一時代を築き、この時代はランチアに移籍していた巨匠、ヴィットリオ・ヤーノ技師が手がけたD23は、専用の鋼管スペースフレームにV型6気筒4カムシャフトの専用エンジンを搭載。ピニンファリーナのデザインによるスパイダーボディを架装した、純粋なレーシングスポーツである。

ところが、1953年5月に実戦投入されたD23は複数のレースで上位入賞するも、同時代のフェラーリなどに阻まれて優勝は果たせなかった。

そこでランチアは、D23の空力面やエンジンをブラッシュアップした改良型であるD24を、D23のデビューから遅れることわずか3カ月の1953年8月に実戦投入。同年11月の「カレラ・パナメリカーナ・メヒコ」でファン・マヌエル・ファンジオが初優勝を果たす。

また翌1954年の「ミッレ・ミリア」でアルベルト・アスカリが、そして1954年の「タルガ・フローリオ」と「ジーロ・ディ・シチリア」ではピエロ・タルッフィが総合優勝を果たすという目覚ましい戦果を残し、ランチアの名を世界に轟かせる名作となったのだ。

ランボルギーニ ミウラP400SV

ランボルギーニ「ミウラ」は、この種のクラシックカーイベントでは常連中の常連。今や特段珍しいものではなく、今回のアウト・エ・モト・デポカでも両手に余るほどのミウラを見かけた。しかし、こちらも「MOTOR VALLEY」コーナーに展示されていたオレンジ色のミウラP400SVをよくよく見ると、ヘッドライトの上下にスタンダードのP400SVには無いはずの「まつ毛」がある。

これでお気づきの方も、きっといらっしゃることだろう。このP400SVは、開祖フェルッチオ・ランボルギーニ自身が生涯愛し続け、現在もランボルギーニ家がボローニャ近郊の農村で開いているプライベートミュージアム「ムゼオ・フェルッチオ・ランボルギーニ」から出品された個体なのだ。

ミウラの歴史的意義は誰もが認めるものながら、普通の市販型ミウラ1台1台は「人類の宝」とまでは言いがたい。でも、フェルッチオがあえてまつ毛つきでオーダーし、1993年に逝去するまで愛し続けたこの個体ならば、間違いなくイタリア自動車史の文化遺産に相当する……、と断言しても間違いあるまい。

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  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 1967年生まれ。かつてロールス・ロイス/ベントレー、フェラーリの日本総代理店だったコーンズ&カンパニー・リミテッド(現コーンズ・モーターズ)で営業・広報を務めたのちイタリアに渡る。帰国後は旧ブガッティ社日本事務所、都内のクラシックカー専門店などでの勤務を経て、2001年以降は自動車ライターおよび翻訳者として活動中。また「東京コンクール・デレガンス」「浅間ヒルクライム」などの自動車イベントでも立ち上げの段階から関与したほか、自動車博物館「ワクイミュージアム(埼玉県加須市)」では2008年の開館からキュレーションを担当している。
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