経年劣化に負けず気持ちよさをキープ
1994年の創刊直前から『GT-R Magazine』とともに歩み続けてきたBNR32 V-spec II号は、現在走行距離45万kmを超えている。走行5000kmでのO/Hに始まり、現在のNISMO S2仕様に落ち着くまでのエンジンチューン&メンテナンスを振り返ってみたい。
常用域でのパワーが気持ちいい! 一体感あるフィーリングを実現
世の中は翌年発表になるBCNR33に注目していた1994年、R32 Vスペック II号は編集部へやってきた。納車後すぐに慣らし運転に出かけ、創刊(000)号でその様子をレポート。さらに001号では5000kmを超えた時点でオーバーホールを実施するべく、N1耐久で多くの実績がある「サイマー」の手に委ねた。残念ながら当時のエンジンを味わった編集部員はすでにおらず、どんなフィーリングだったのか聞くことはできない。だが、さぞかし気持ちのいいものだったのだろう、と誌面から伝わってくる。
さて、その後は3年間ほど心臓部に動きはない。次にエンジンに手を入れたのは1998年のこと。まだ発売前という「ニスモ」の400psコンプリートエンジン「RB26スペック I」を搭載し、長期テストを開始する。これが後のS1に繋がっていくのだ。
そして2年後の2000年、ついにニスモS1を搭載。当時の走行距離は10万5000km超。そろそろ全体的に経年劣化によるトラブルが出てくる時期だが、ここで再び元気を取り戻した形だ。しかし、12万kmでホース類が悲鳴を上げる。水漏れを起こしてオーバーヒートを経験してしまう。とはいえ、大事にはならずヒーターホースの交換で対応。途中、ラジエータを2度交換し、21万5000kmでブリッツのオイルクーラーを投入したことでクーリングについては万全の体制を取った。現在でもR32 Vスペック II号はオーバークールとまでは言わずとも、四季を通して冷却に悩まされることはない。
新車状態へのフルレストアでエンジンもリセット
そして現在のところR32 Vスペック II号史上最大のトピックとなるフルリフレッシュが敢行されたのが2008年。28万9000kmのときだった。ボディだけでなくS1エンジンもオーバーホールが施される。当然作業は「ニスモ大森ファクトリー」の手によるもの。錆による腐食もあり、新品のN1ブロックを投入し、現在に至るまで使用している。
4年後の2012年には32万1000kmでS2仕様へ。エンジン載せ換えではなく、大森ファクトリーが設定した「S2バージョンアップメニュー」を利用した。とはいえ、ガスケット交換などがあるため、エンジンを降ろす大作業。R35純正インジェクターとデリバリーパイプ、メタルガスケット、タービンアウトレットパイプ、専用ECMなどを交換している。フルコンバージョンではS2専用カムを使用するが、プロフィール自体はS1と同じため、バージョンアップの場合はバルタイ調整で対応する。
それでも洗練されたフィーリングは今も継続中。ちなみにS1搭載後10万km時点で一度大森ファクトリーにてチェックしたが、やっとアタリが付いてきたくらいと高評価を得ている。現在心配なのはS1のO/H時に交換したままとなっているタービン。エアフロ数値のバラツキなど予兆が見え隠れしており、今後の課題である。
2023年11月末時点で総走行距離は約45万km。上記のようにオーバーホールやエンジンの仕様変更などは都度行っているが、そのきっかけはすべてトラブルによるものではない。酷使し続けるような使い方でなければ、メンテナンスをしっかり行うことでRB26はいつまでも力強い走りを味わわせてくれるだろう。