ダッシュボード・オブ・ザ・イヤーを受賞
フライングスパーとコンチネンタルGTのために開発されたベントレーローテーティングディスプレイが、パリのコンコルド広場にある権威あるフランス自動車クラブで開催された第6回オートモービルアワードにおいて、ダッシュボード・オブ・ザ・イヤーを受賞した。そのような賞がある事自体驚きではあるが、ローテーティングディスプレイとはどのようなものか見ていこう。
70%の顧客が選ぶ人気のオプション
ベントレーのフライングスパーとコンチネンタルGTではオプションとしてローテーティングディスプレイを選択することができる。90万円を超える価格になるが、おおよそ70%の顧客が選ぶという人気のオプションだ。
イメージ的には横を向いた三角柱がセンターコンソールで回転してナビを含むインフォテインメントスクリーン、外気温、コンパス、クロノメーターからなるクラシックな3連アナログメーター、そしてエレガントなウッドパネルがボタンひとつで回転して選択し表示できるという機能だ。
イギリスのクラシカルなホテルに泊まると、テレビが木の扉の奥に隠されていることを多く体験した。これと同じく必要のない、特にデジタルの情報は極力見せないというイギリスらしい美学からきているオプションなのだ。
精緻なクラフツマンシップと最新技術の融合
このローテーティングディスプレイの開発に、チームは3年以上の歳月を費やし、この153個の部品から構成される3面回転式ディスプレイのシステムを完成させた。そして、わずか±0.3mmの公差で各面を調整するこのメカニズムの特許を取得したという。
非常に狭いクリアランス(左右それぞれ0.5mm以下)を保ちながら回転するメカニズムを実現するためには、3つの別々の、しかし連動した動作が必要となる。最初の動作は、ユニットをダッシュボードの内側に引き込み、次に回転のためのクリアランスを確保してから、最後にユニットをモーターで前進させて元の位置に戻すという一連の動きである。このレベルの精度を達成するためのメカニズムは、専用の電子制御ユニット(ECU)によって制御される高度なモーターとギアボックスドライブユニットを含む40個の可動部品で実現される。
フランス自動車クラブの審査委員会は、自動車業界および非自動車業界の専門家、ジャーナリスト、パートナーからなる20人の専門家審査員で構成されるが、車の中心に置かれたこのユニークな装備をコンチネンタルGT誕生20周年を迎える今年に高く評価した。
システムを開発する際、デザイナーとエンジニアは、比類なきクラフツマンシップというブランドの哲学と、ボタンを押すだけで利用できる最先端技術を確実に融合させることに注力したという。このように相反する価値を融合することはベントレーのお家芸と言っても過言ではない。70%の購入者がこのオプションに価値を感じ選ばれる理由がわかるような気がする。
AMWノミカタ
今回のローテーティングディスプレイはクラフツマンシップと最先端技術の融合と謳っているが、実は地味なエンブレムの刺繍なども細かなニュアンスを表現するために工場内のミシンの開発から手を付けている。ベントレーの最良を追求する徹底的な姿勢にはいつも驚かされる。