そのまんま靴のかたちをした広告宣伝車両
すべての訪問客が通過するエントランスホールにて待ち受けていたのは、約70年前のイタリアでは「シューズカー」と呼ばれ、非常に有名だったという1台。
靴磨きグッズのメーカー「エバーノ」社のオファーにより、フィアット量産車ベースにワゴン/バンなどの「フォーリ・セリエ(カタログ外モデル)」や、救急車や霊柩車などへの改造を行うことで知られていたボローニャのコーチビルダー、「グラツィア」が、1950年代初頭のボンネット型トラック/バン、「フィアット615」のシャシーを利用して製作した広告宣伝車両である。
機関系の製作・施工は、当時レーシングカーのコンストラクターとしても名を馳せたモデナの「スタンゲリーニ」が担当したというのも、この巨大な「靴」にまつわるものとしては重要なエピソードだろう。
退役後は長らくエバーノ社工場の屋外に放置され、ボロボロに朽ちかけていたところを数年前に救出され、フルレストアが施されたとのことである。
6輪スーパーカー! コヴィーニC6W
自動車ボディケア専門業者の出展ブースで、デモンストレーション作業用のサンプル車両として用意されていたのは、なんと6輪の2シータースポーツカー。「世界で唯一の6輪の公道走行が可能なスーパーカー」を標榜し、2004年から2016年にかけてイタリアで一定数が製造されたという「コヴィーニC6W」である。
ボローニャと同じエミリア・ロマーニャ州のピアチェンツァ近郊に本拠を置くコヴィーニは、1981年からディーゼルエンジンを搭載したスポーツクーペの試作車を発表していたが、第1作の「B24」を約10台生産した以外はいずれもワンオフに終わり、コヴィーニの名が広まることはなかった。
そんなコヴィーニが、起死回生を狙って2004年のパリ・サロンで発表したのがC6W。フロント2軸4輪+リア1軸2輪というレイアウトは、1976~77年シーズンのF1GPで活躍した「ティレルP34」 にインスパイアされ、その後30年もの構想・開発期間を経たとのことだが、1970年代後半の英国で同じく6輪スーパーカーを目指して開発、2台が製作された「パンサー6」の影響も否めないだろう。
アウディから供給されるV8エンジンは、コヴィーニ初のガソリン。排気量は4.2L、最高出力は440psを発生するとされ、ハードトップの装着でクーペにもなる車両重量1150kgのボディを、最高速度300km/hで走らせると標榜した。2010年ごろから生産に入ったが、実際に作られたのは10台前後と見られている。
おまけ:フルチューン(?)の快速ランボルギーニ(のトラクター)
バラエティ展示コーナーの様相を呈するホール屋外では、ランボルギーニの源流である農耕用トラクターが複数置かれていた。そのなかでもっとも強烈なキャラだったのが、やたらとレーシーな出で立ちの1台。
ボディは大幅に省略され、前後にはカーボンファイバー製(カーボン風?)のウイングを装着。ホイールには空気抵抗を軽減する(?)整流プレートも取りつけられている。
トラクターの背後に置かれた等身大パネルのフェルッチオ・ランボルギーニが「ドヤ顔」っぽく見えるのに対して、同じく等身大パネルとされたエンツォ・フェラーリが爆笑しているかに見えるのは、筆者の気のせいだろうか……?