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珍車・迷車が目白押し!「6輪スーパーカー」にルイジ・コラーニのコンセプトカーなどヘンなクルマを紹介します

鬼才デザイナー、ルイジ・コラーニが製作したコンセプトカー

イタリアのカーショーで、イタリアの奇想天外なクルマたちと遭遇

筆者が世界のクラシックカーショーを訪れる楽しみのひとつは、「ナニコレ?」といいたくなるような、奇想天外な珍車に遭遇できること。パリの「レトロモビル」ではフランス車。「テクノクラシカ・エッセン」ではドイツ車。「NECクラシックカーショー」では英国車。そしてパシフィコ横浜の「ノスタルジック2デイズ」では、日本ならではの珍車に出逢うことがしばしばある。2023年の10月26~29日、筆者はイタリア・ボローニャで開催された「アウト・エ・モト・デポカ(Auto e Moto d’Epoca)2023」を訪ねたのだが、ここで出会ったイタリアの珍車たちも、なかなか個性キツめであった。

星型エンジンのグランプリマシン

会場であるボローニャ・フィエラのエントランスを抜けた場所にある大型スペースでは、トリノの「国立自動車博物館(通称MAUTO)」の特別展示が行われていたが、そこで出くわしたのが伝説の「モナコ・トロッシ」。

1930年代のイタリアを代表するジェントルマンレーサー、カルロ・フェリーチェ・トロッシ伯爵と、エンジニアのアウグスト・モナコによって設計された革新的なコンセプトを特徴とするレースカーである。

現代のF1GPに相当するA.I.A.C.R.750kgフォーミュラに応じて開発され、1935年のイタリア・グランプリ出場権をかけたトライアルでテストされたこのマシンは、同時代の戦闘機のような車体構造とスタイリングも斬新だったが、なにより注目すべきは、空冷星形エンジンで前輪を駆動するパワートレインである。

エンジンは2ストロークの空冷2重星形16気筒4Lで、スーパーチャージャーを組み合わせて250psをマーク。トライアルのコースであるモンツァ・サーキットでは、240km/h以上の平均速度をマークした。

しかし、車両前端に巨大なエンジンを置くトリッキーな操縦性は、カルロ・フェリーチェ・トロッシのような腕利きのレーシングドライバーにとってさえも乗りこなすのは難しかったようで、イタリアGPのテストステージには不合格。このプロトタイプが製作されたのみに留まったという。

ルイジ・コラーニのコンセプトカー

アウト・エ・モト・デポカ屋外の展示スペースで発見したのは、鬼才デザイナー、ルイジ・コラーニが製作したコンセプトカーのひとつ。

1950年代から工業デザインの分野で多くの作品を手がけていたコラーニだが、そのキャリアのスタートは自動車デザインであり、自身のデザインオフィスを立ち上げてからも驚くべきペースで数多くのコンセプトカーを発表し続けていた。それらの作品は、1980年代に日本企業とのコラボで発売された「チョロQルイジ・コラーニ」にも反映されている。

今回発見した個体も、コラーニのコンセプトカーのひとつ。現在はボロボロの状態で、エンジンやトランスミッションなどは失われており、メカニカルコンポーネンツの供給源であるベース車両も不明なのだが、調べてみるとどうやら1989年および1992年に速度記録チャレンジを行ったレコードブレーカーである可能性が高いようだ。

1000psを発揮する米フォードの7L・V8エンジンを搭載し、407km/hの最高速度を記録したというが、現在では見る影もない。誰かが入手して、レストアを施すことに期待したい。

そのまんま靴のかたちをした広告宣伝車両

すべての訪問客が通過するエントランスホールにて待ち受けていたのは、約70年前のイタリアでは「シューズカー」と呼ばれ、非常に有名だったという1台。

靴磨きグッズのメーカー「エバーノ」社のオファーにより、フィアット量産車ベースにワゴン/バンなどの「フォーリ・セリエ(カタログ外モデル)」や、救急車や霊柩車などへの改造を行うことで知られていたボローニャのコーチビルダー、「グラツィア」が、1950年代初頭のボンネット型トラック/バン、「フィアット615」のシャシーを利用して製作した広告宣伝車両である。

機関系の製作・施工は、当時レーシングカーのコンストラクターとしても名を馳せたモデナの「スタンゲリーニ」が担当したというのも、この巨大な「靴」にまつわるものとしては重要なエピソードだろう。

退役後は長らくエバーノ社工場の屋外に放置され、ボロボロに朽ちかけていたところを数年前に救出され、フルレストアが施されたとのことである。

6輪スーパーカー! コヴィーニC6W

自動車ボディケア専門業者の出展ブースで、デモンストレーション作業用のサンプル車両として用意されていたのは、なんと6輪の2シータースポーツカー。「世界で唯一の6輪の公道走行が可能なスーパーカー」を標榜し、2004年から2016年にかけてイタリアで一定数が製造されたという「コヴィーニC6W」である。

ボローニャと同じエミリア・ロマーニャ州のピアチェンツァ近郊に本拠を置くコヴィーニは、1981年からディーゼルエンジンを搭載したスポーツクーペの試作車を発表していたが、第1作の「B24」を約10台生産した以外はいずれもワンオフに終わり、コヴィーニの名が広まることはなかった。

そんなコヴィーニが、起死回生を狙って2004年のパリ・サロンで発表したのがC6W。フロント2軸4輪+リア1軸2輪というレイアウトは、1976~77年シーズンのF1GPで活躍した「ティレルP34」 にインスパイアされ、その後30年もの構想・開発期間を経たとのことだが、1970年代後半の英国で同じく6輪スーパーカーを目指して開発、2台が製作された「パンサー6」の影響も否めないだろう。

アウディから供給されるV8エンジンは、コヴィーニ初のガソリン。排気量は4.2L、最高出力は440psを発生するとされ、ハードトップの装着でクーペにもなる車両重量1150kgのボディを、最高速度300km/hで走らせると標榜した。2010年ごろから生産に入ったが、実際に作られたのは10台前後と見られている。

おまけ:フルチューン(?)の快速ランボルギーニ(のトラクター)

バラエティ展示コーナーの様相を呈するホール屋外では、ランボルギーニの源流である農耕用トラクターが複数置かれていた。そのなかでもっとも強烈なキャラだったのが、やたらとレーシーな出で立ちの1台。

ボディは大幅に省略され、前後にはカーボンファイバー製(カーボン風?)のウイングを装着。ホイールには空気抵抗を軽減する(?)整流プレートも取りつけられている。

トラクターの背後に置かれた等身大パネルのフェルッチオ・ランボルギーニが「ドヤ顔」っぽく見えるのに対して、同じく等身大パネルとされたエンツォ・フェラーリが爆笑しているかに見えるのは、筆者の気のせいだろうか……?

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