女性誌風のカタログ
エンジンは当時の550cc時代の2気筒で、これにL(ギヤ比:1.821)とD(同:1.000)の2ポジションのAT付き。エンジン性能は30ps/4.2kgmというものだったが、これがなかなかに走らない。首都高速の上り坂でLに落として「エイヤッ!」とアクセルを踏み込もうにも一向にスピードが乗らず、みるみる背後から大型トラックに迫られ怖い思いをした記憶がある。なおその家族はミラ・キャトレの次にミラとはカタカナ表記で1文字違い(!)のクラシック「ミニ」のメイフェアに乗り換えたが「運転がずいぶん楽になった」と言っていた。
話が前後するが、初代ミラではカタログの体裁もなかなか凝ったものだった。写真でお見せしているのは1983年、1984年のものだが、いずれも当時の女性誌風の仕立て。各見開きのコピーを拾うと「ミラ感覚、流行中」「街に、咲いた」「やさしいから、好き」「ちょっぴりセクシー、S」「女の気持ちの4WD」といった具合だ。4WDのページのボディコピーに至っては「ミラ4WDで、走りのエリア広げてみない?」と、これはもう完全に男の出番なしといったところ。とはいえベーシックなクルマをスマートに乗りこなすことの推奨ということでは、日本車として先進的なコンセプトだったともいえる。
なお1982年に車名が「ミラ」となった後、1983年になるとトランスファーシフトレバー、フリーホイールハブ、オールシーズンラジアルタイヤ、ノンスリップデフ(オプション)などを装備した4WD車を設定。同じタイミングでターボも登場している。このターボは41ps/5.7kgmを発揮、タコメーターやガングリップ型のシフトノブ、ラジアルタイヤなどを備え、走りの性能を高めたモデルだった。ただしキャッチコピーは「ペパーミント。ターボ」で、あくまでも女性向けに、さわやかな走りを訴求していた。