ボルボらしさは健在
適度にボクシーで、流行りのスクァークル(四角丸)風のラインや、前後に横一文字のライト類一体型のオーナメントを採用しなかったエクステリアも、ボルボらしい生真面目さが漂う。トールハンマーのヘッドランプはLEDピクセル大きめとなった。またボルボ伝統の縦長テールランプは2分割になって、上側がハイマウント状になっているが、無いものを視線が繋いでしまう効果がまた心憎い。
ちなみにフロントボンネットの左右両端と、ボディサイドの「えぐり」も、彫刻刀でひと削りしたような意匠で凹部の山折りエッジ同士は本来、ひとつの面でなめらかに繋がっているのだ。こういうゲシュタルト効果を狙った細部を多々含むエクステリアは、じつはGMからキャリアをスタートしてサーブ経由でボルボに辿り着いた、ドイツ人デザイナーの手によるもの。さらにいえば、センタースクリーンのデジタル・インターフェイスを設計したのは、前職はブラックベリーだったというカナダ人のITエンジニアだ。北欧デザインも多国籍チームによって、新しい高みに到達しているのだ。
他のコンパクトと一線を画すイージードライブ感
ところで走ってみた印象だが、BEVならではの低重心による圧倒的なスタビリティが際立つ一方、その気になればコンパクトカーとしてキビキビと走らせることもできる。ステアリングの中立付近は、敏感過ぎずどっしりしていて、高速道路でもストレスなく安心感が高い。ワインディングでは少し早めに初期の微舵角を入れてやる必要があるが、その感覚を掴んだらそれなりにハイペースで峠や郊外路を楽しめる。
それでも、EX30のBEVらしさが際立つのは、市街地での扱いやすさだ。街乗りに向いたサイズ感であるのはもちろん、ワンペダルドライブによる減速から停止までのもっていきやすさ、前走車との距離の調節しやすさが、抜群にいいのだ。ワンペダルで静止できないワンペダルはワンペダルではないはずだが、EX30はそこは字句通りにちゃんと造り込んでいる。ステアリングは思い切って軽くした感じだが、イージードライブ感と静粛性の高さは、既存の欧州BセグメントSUVとははっきり一線を画す。後席や室内、ラゲッジスペースの広さも相まって、実用レベルでも最高の選択肢になりうる。
惜しむらくは、ワンペダルドライブと通常のコースティングありのドライブとの切替が、タッチスクリーン内で最低2~3タッチ要ること。ステアリングホイール上で、ADASの操作より気軽に頻繁に切り替えられたら申し分ないのだが、まぁ、配線ハーネスの節約として、納得できる範囲ではある。
いずれ、これまで選択肢のほとんどなかったコンパクトな最新世代のBEVにして、車両価格はシングルモーター仕様で559万円(消費税込)。補助金にもよりけりながら、実質的には500万円アンダーのプレミアムBEVにして、高級車にありがちなエゴ・セントリックな1台ではなく、エコ・セントリックであることを、あざとさゼロで可視化できている1台だと思われる。日本でもオーダー受付中で、デリバリーは2024年2月から始まる予定だ。