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ポルシェ「カレラカップ」が電動化!? 1088馬力の「GT4 eパフォーマンス」はすでに「911 GT3」と同等以上の速さでした

最大30分と規定されたカレラカップと同等時間のレースで、911 GT3カップと同等のタイムで走行する性能をもつという

ポルシェのカスタマーレーシングの将来を占う電動レーシングカー「GT4 eパフォーマンス」が日本上陸

電動化を推進するポルシェの電動レーシングカー「GT4 eパフォーマンス」のプロトタイプが日本に初上陸しました。DNAでもあるレースにおいても電動化を進めるポルシェ、この電動レーシングカーは将来的なポルシェのカスタマーレーシングを占うモデルとなります。

最高出力1088馬力の電動レーシングカー

2023年10月中旬、ポルシェ エクスペリエンスセンター東京(以下PEC東京)開業2周年を記念し、電動レーシングカー「GT4 eパフォーマンス」が日本に初上陸した。

ポルシェはいま、2030年までに80%超の市販車を内燃機関から電気自動車へとスイッチしていく目標を掲げている。「タイカン」に続いて、2024年にはポルシェの電気自動車の第2弾となる次期型「マカン」の発表が予定されており、続いて次期型の「718ケイマン/ボクスター」をBEVにすると公表している。

この電動化戦略にともないカスタマーレーシングにおいても電動化を図っていくというわけだ。ポルシェの歴史においてモータースポーツは切っても切り離せないものだ。ファクトリーレーシングとしてWEC(世界耐久選手権)やフォーミュラEに参戦するのをはじめ、顧客にレースカーを販売し、サポートを行うカスタマーレーシングというビジネスモデルを構築した先駆的存在でもある。

その代表格が「911カレラ」のレーシングバージョン(通称カップカー)で競われる「世界最速のワンメインクレース」、ポルシェ「カレラカップ」。30年以上の歴史があり、現在世界10カ国以上で開催されている。日本でも2001年にカレラカップジャパン(PCCJ)がスタートし、今年で23シーズン目を数える人気ぶりだ。

GT4 eパフォーマンスは、将来的なポルシェのカスタマーレーシングを占う電動レーシングカーだ。2021年に公開された「ミッションRコンセプト」と、電気モーターやバッテリー技術など多くのコンポーネントを共有。専用のオイルクーリングシステムを備え前後2基のモーターで4輪を駆動し、最高出力は1088psを発揮する。まだプロトタイプゆえ電気自動車の専用設計ではなく、「ケイマンGT4 RSクラブスポーツ」のシャシーを利用し、80kWhのバッテリーをフロント、助手席、リアの3分割で搭載する。ステアリングに備わるパドルは回生ブレーキのレベル調整ではなく、トルク配分を行うものだ。

またタイヤはカレラカップなどで20年以上にわたってパートナーを組むミシュランがこのクルマのために開発した電動レーシングカー専用のスリックタイヤ。使用済タイヤのリサイクル材などを53%使用しながら、グリップや耐久性など従来品以上の性能を実現する。将来的にはこのワンメイクレース用のタイヤとして採用される見込みだ。

電動化しても変わらない「ポルシェの矜持」

この日、PEC東京の周回コース(2.1km)で助手席に同乗する機会が与えられた。インテリアには718の面影はなく、まさにレーシングカーの様相だ。助手席の足元にも大きなバッテリーが置かれている。それを避けるようにして着座する。事前に万が一の際には、感電しないように車外へとジャンプアウトするインストラクションをうける。

ドライバーは、ポルシェのワークスドライバーであり開発ドライバーも務めるマルコ・ゼーフリート氏。通常は全開走行が禁じられているPEC東京の外周コースにいきなりアクセル全開でコースインする。まだ熱の入っていないスリックタイヤがスキール音をあげる。人工的なエンジンサウンドなどの演出は一切加えていないという。

トランスミッションは1速なのでシフトアップ&ダウンといった変速音はないが、モーターやインバーターの音が加減速に連動するのでエンジン音がないことへの違和感はそれほどない。何より前後にモーターを搭載する4WDの電気自動車ゆえ、コーナーの立ち上がりでもラグタイムがなく瞬時に加速し、直線の少ないこのコースではつねに高Gにさらされる。想像していた以上に、いや猛烈に速い。今回経験できたタイムアタックモードでは、すでにタイプ992の「911 GT3カップ」をも上回る性能を発揮するというのも頷ける。

現段階における「GT4 eパフォーマンス」は、1スティントあたり25~30分間のレースを911 GT3カップと同等のタイムで走行する性能をすでに達成しているという。しかし、まだ世界に2台しかないプロトタイプカーであり、価格はもちろんのこと、走行するためはエンジニアやメカニックなど最低6名のスタッフが必要になるなど実用化への課題は多い。将来的には経済面や整備面など、現在のカレラカップと同等の予算や人員で参加できるものを想定する。

911カップとGT4 eカップが併催される可能性も!?

ポルシェの開発チームの来日の狙いは、世界中のカスタマー、カレラカップ参加者たちにこのプロトタイプを見てもらい意見をもらうことという。2022年から2024年までをツアーフェーズとし、世界中をまわってお披露目ツアーを敢行している。そして2025年には、次期718シリーズと並行して開発される次期型プロトタイプレーシングカーの開発に着手。その後、いつとは明言されなかったが、新たなエレクトリックカスタマーレーシングシリーズを立ち上げるという。

ちなみにその時点で現在のカレラカップが消滅するというわけではないようだ。ポルシェのオリバー・ブルーメCEOも、ポルシェのラインアップにおいて最後まで内燃エンジンが残るのは911になるだろうという主旨の発言をしており、カレラカップとGT4 eカップが併催される可能性ももちろんある。

ポルシェのカスタマーレーシング部門のマネージャーであるオリバー・シュワブ氏はこう話していた。

「モータースポーツは、創業以来、ポルシェのDNAに刻まれているものです。これまでもずっと量産車とレースカーには相関性があり、互いに影響を与えながら車両開発を行ってきました。いま電動化という課題に直面するなかでモータースポーツはどう変わっていくのか、どんな役割を果たすことができるのか。われわれは新たにエレクトリックカスタマーレーシングを開拓していく必要があります」

電気自動車の時代になっても変わらないというポルシェの矜持を感じる。

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