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「リトル・ジャイアント」と呼ばれた! マツダ「ファミリア ロータリークーペ」は格上のマシンをカモっていました

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TEXT: 原田 了(HARADA Ryo)  PHOTO: 原田 了/宮越孝政/佐藤亮太

マツダ・レ-シング・チームの遠征最後のレースに有終の美を添えた

翌1970年は、国内のマイナーチェンジに合わせて車名がファミリアプレスト・ロータリークーペと変更されていましたが、そのリトル・ジャイアントぶりは変わることがありませんでした。シーズン最初のレースは英国のシルバーストンで行われたRACツーリスト・トロフィ。TTレースという愛称で親しまれている、ツーリングカーの王者決定戦として35回の開催回数を誇る伝統の一戦です。

このシーズンは初めてETCCの正式ラウンド、シリーズ第5戦として開催されていました。ロータリークーペがこれまで戦ってきた耐久レースとは異なり、2時間レースを2回戦う2ヒート制のレースで、地元イギリスの強豪に加えて、ETCCの正式ラウンドとなったためにドイツやイタリアの強豪も顔をそろえる豪華なエントリーリストとなっていました。

2時間というレース時間は、これまでにロータリークーペが戦ってきたレースに比べて短時間なもので、高速での耐久性を大きな武器にしてきたロータリークーペにとっては楽でない展開となりそうでした。結果的にはその通りで武智/片山組の31号車が8位、片倉/ベイカー組が10位、デプレ/ジュリアン・ヴェルナーヴ組が12位に留まっています。

続いての戦いはETCCのシリーズ第6戦、ニュルブルクリンクで行われたツーリングカー・グランプリ。今度は6時間の耐久レースでした。レース時間が長くなったことでロータリークーペは本領を発揮し片山/デプレ組が5位でチェッカー。片倉/武智組とヴェルナーヴ/ベイカー組が6~7位に続き、3台が揃って上位入賞していました。

このシーズン3戦目にしてラストレースとなるETCC第6戦のスパ-フランコルシャン24時間でした。マツダ・レーシング・チームは4台をエントリーし武智/片山組が予選6番手を奪い、耐久性だけでないところを見せて24時間レースをスタートすることになりました。スタート前から降り続く雨の中、4台のロータリークーペは快調に周回を重ねていきます。

トップを快走するBMW2800CSを追い詰める

なかでも武智/片山組のペースが速く、スタートから8時間後には2位にまで進出し、なおトップを快走する事実上BMWワークスのアルピナがエントリーしているBMW2800CSを追い詰めていきました。そして日付が変わった午前1時過ぎにとうとうBMWを攻略してトップに立っています。その後は、武智/片山組のロータリークーペとアルピナのBMWはピットインの度に順位が入れ替わるトップ争いを展開します。

しかしスタートから21時間を過ぎたところで武智/片山組のロータリークーペがエンジンブローでストップしトップ争いに決着。この時点でロータリークーペ勢は片倉/ベイカー組が3位、エネヴァー/ジョン・ハイネ組が4位につけていました。

片倉/ベイカー組はその後2位に進出しましたが残り1時間余りとなった281周目にエンジンブローでストップしてしまいます。マツダ・レ-シング・チームは残る1台、エネヴァー/ハイネ組を何としてでも完走して入賞させようとペースダウンを指示し、そして24時間を走り切ったエネヴァー/ハイネ組は5位入賞。マツダ・レ-シング・チームの遠征最後のレースに有終の美を添えることになりました。

今回、「箱車の祭典2023」に出走した1970年スパ24時間仕様のマツダ ファミリアプレスト ロータリークーペは2台。ホワイトのボディに赤いストライプが映える31号車はチームのエースカーとしてレース中盤にトップを快走していた武智俊憲/片山義美組のファミリアプレスト ロータリークーペを、同じくグリーンのストライプが映える33号車は5位に入賞したロジャー・エネヴァー/ジョン・ハイネ組を再現したもの。

当時の写真を見返しても微妙に異なる2台のオーバーフェンダーなどを正確に再現していることがよく理解できました。2台のコンボイ走行を見ていると1970年のスパにタイムスリップした感があったのです。

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  • 原田 了(HARADA Ryo)
  • 原田 了(HARADA Ryo)
  • ライター。現在の愛車は、SUBARU R1、Honda GB250 クラブマン、Honda Lead 125。クルマに関わる、ありとあらゆることの探訪が趣味。1955年、岡山県倉敷市生まれ。モータースポーツ専門誌の地方通信員として高校時代にレース取材を開始。大学卒業後、就職して同誌の編集部に配属。10年間のサラリーマン生活を経て90年4月からフリーランスに。モータースポーツ関連の執筆に加え、オートキャンプからヒストリックカーイベントまで幅広く取材。現在ではAMWに、主にヒストリー関連コラムを執筆。またライフワークとなった世界中の自動車博物館歴訪を続け、様々な媒体に紹介記事を寄稿している。
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