N1エンジンの美点を生かす技法
2002年8月に『GT-Rマガジン』のスタッフカーの仲間入りをしたBNR34 V-spec II Nür。第2世代ラストモデルということでしばらくはフルノーマルを維持。その後、2度のエンジンO/Hを経て現在の走行距離は37万kmに到達している。Nürの証しであるN1仕様RB26との付き合いを振り返る。
バランス取りの効果を肌で実感! ノーマルベースでも別物に変身
10万kmまではフルノーマルで通していたGT-RマガジンのR34ニュル号。機関にはトラブルもなく至って快調であったが、もともと高ブーストで本領を発揮するN1タービンが標準ということで、正直なところノーマルでは低速トルクの細さがストレスにもなっていた。
そんなこともあり、11万6200kmの時点で初めてGT-Rチューニングを得意とするショップ「マインズ」にてエンジンを降ろし、精密分解オーバーホールを施した。その際、ピストンやコンロッド、クランクシャフトなどのエンジンパーツはすべてN1純正をチョイス。ベースのポテンシャルを引き出すべく、シリンダーをボーリングして1mmオーバーサイズの87φピストンを組み込み、各部バランス取りを施してもらった。
とくに大きな問題はなかったが、一部メタル類に油膜切れによる焼き付きの跡が。ノーマルでサーキット走行などを行ったことが原因との診断で、横Gでオイルパン内のエンジンオイルが片寄り、油圧が低下したことが影響したと考えられる。
気持ちよさが高まり走りを堪能していたら……
完成したN1エンジンのフィーリングは感動的で、ノーマル時とは別物の澄んだ音色を奏でた。ブースト圧はノーマルのままとしたこともあり、低速域のかったるさは残ったものの、精密オーバーホールによって上まで回すことがさらに快感になった。そして、17万9000km時に同じくマインズでブーストアップチューンを実施。ただし、インジェクターは純正のまま、最大ブーストは0.95kg/cm²と控えめに(約430ps)。それでも4500rpmから上のパンチが明らかに増した印象だった。
あまりに気持ちのいいエンジンに進化したため、企画でサーキットなどを走る機会も増加。オイルクーラーは途中で追加したものの、ラジエータはこのときまだ純正のままだった。そのせいもあるのだろう。20万9000kmでまずフロント側のタービンシャフトが焼き付いてロック。新品タービンに交換して事なきを得たかと思ったら、今度は24万4000kmでエンジンから異音が……。
分解したところ、3番ピストンの子メタルが欠損しクランクシャフトにも基準値を超える曲がり(100分の15mm)が見られた。オイル管理はしっかりとしていたつもりだが、純正ラジエータのままサーキット走行などを行ったことの影響が出たのだろう。
2度目のオーバーホールはトラブルが引き金となったが、この際、ピストン/コンロッド/オイルポンプを「東名パワード」製の強化品に交換。ブロックとクランクシャフトは純正に交換し、再びマインズにて精密オーバーホールを実施してもらった。
現在、2度目の施工から13万kmが経過しているが、エンジンは快調そのもの。これまで12万kmごとにエンジンを開けているので、次は走行36万kmを迎えたら……と思っていたが、主治医であるマインズの中山メカニックからは、「街乗りだけであれば、きちんとオイル交換などメンテナンスを続ければあと10万kmは走れるくらい好調」とお墨付きをいただいた。そこで走行距離が46万kmに到達したらエンジンを降ろして状況を確認しようと思っている。補修部品のエンジンブロックなどは受注停止という状況。ブローなどさせないよう大事に走り続けたい。