クルマを安全・確実に走らせるためにスポーツシートは重要
ドライビングを楽しむうえで、シートが果たす役割は想像以上に重要だ。横Gに負けないホールド性はもちろんのこと、日常使用における快適性を追求する意味でも、シートはドライバーとクルマにおける唯一の接点であるからこそこだわりたい。そこで今回はスポーツシート専門メーカーのBRIDEを訪れ、同社のシート哲学やホンダ「S660」にマッチする新型フルバケットシートについて訊ねた。
シート交換はチューニングのひとつ
「ハガキ4枚分の大きさでクルマは路面と繋がっている」とは、タイヤの重要さを表す際によく使われる表現だが、そのクルマを運転するドライバーは、ステアリング/シート/ペダルで車両と繋がっている。ドライビングを語るときに「お尻でクルマの動きを感じる」と言うくらい、なかでもシートの存在は重要だ。
「シートでクルマの走りは変わります。もちろん動力性能がアップするわけではありませんが、ドライバーが正しいドライビングポジションを確保することで、ラップタイムは必ず上がります。そういう意味では、シートはチューニングパーツです」
そう話してくれたのは、日本を代表するスポーツシートメーカー「BRIDE(ブリッド)」の代表取締役社長である高瀬嶺生氏だ。ストリートシーンからモータースポーツにおける活躍など、クルマ好きであれば同社の名前を知らない人はいないだろう。そのBRIDEを率いる高瀬社長は、こう力説する。
「愛車の外観をカッコよくしたければ、エアロパーツの装着だったり車高のローダウン、ホイール&タイヤの交換など様々な手段があります。ただオーナーのドライビングそのもののレベルを上げたい場合は、ドライバーの身体に近いところからチューニングすることが大切です」
前述したように、ドライバーはステアリングやシート、ペダルの3箇所でクルマと繋がっており、路面からのインフォメーションを受け取っている。なかでも、身体と触れる面積がもっとも大きいのがシートだ。だからこそスポーツ走行を楽しむ際、シート選びは重要となる。
そしてもうひとつ重要なのは、スポーツ走行を楽しむ以上に、クルマを安全・確実に走らせるためにスポーツシートは重要という点だ。
「クルマやタイヤの性能は年々高まっており、ノーマル状態でもかつてのチューニングカー以上のコーナリングGを発生させる車両は珍しくありません。そんなクルマを走らせるのに、様々な人が座ることを想定した純正シートでは、コーナリング中に体がズレたり、ブレーキングでシートが沈んで踏力が逃げるなど、正確な操作ができないといったリスクが考えられます。正しい運転姿勢をドライバーに提供するという点で、高性能スポーツシートは安全性にも非常に優れたシートといえます」
S660オーナーのなかにも、特にサーキットを走る予定はないというオーナーは多いだろう。けれどストリートやワインディングで万が一の際にドライバーを守る、そして確実に身体をホールドすることで疲労度を軽減するBRIDE製シートは、自身だけでなくクルマ社会全体の安全性を高めてくれる。
今回、紹介するS660オーナーの菊池さんも、そんなBRIDEのポリシーに共感し、運転席にはフルバケットシートの「ZETA IV Verio」、助手席には「ZETA VI」を装着している。あえてフルバケットシートを選んだのは、最適なポジションで身体を保持してくれるからだ。