アルトワークスも舌を巻いたバブル生まれの最強軽カー
クルマ好きに育った大人は、幼少期の頃になんらかの原体験を持つ人々がほとんどだろう。「福岡キューマルミーティング」に参加していたダイハツ「ミラ TR-XXアバンツァート」のオーナー、森大典さんのきっかけは、なんと幼少期に発熱して寝込んでいた時に、母が買ってきてくれたプラモデル。まさか母親は、自分の息子が大人になって、本物を買い求める日が訪れるとは想像もしていなかっただろう。
ネットで見つけた憧れのクルマ。ボロさ加減に届いてビックリ
「子どもの頃からミラが大好きで、セカンドカーとして乗るためのアバンツァートをずっと探していたんです。そして、出会ったのがこのクルマ。3年前ぐらいに、ネットで中古車情報を検索して見つけました。見つけた瞬間に購入を即決したので、何県にあったお店なのかも覚えてないんですよね(笑)」
そう笑って話し始めてくれた森さんの、ミラ TR-XXアバンツァートの思い出は、幼少期に母からのプレゼントだった。発熱して寝込んでいた時に買ってきれたというそのクルマがTR-XX。作りながら「カッコイイクルマだなぁ!」と感じたその体験を忘れることができず、ずっと探し求めていたそうだ。
「地元が福岡なので、九州地方にある車両を何台か見て回ったことがあったのですが、どれも納得できる個体がなかったんです。その反動もあったんでしょうね。衝動的に買いましたね(笑)」
陸送を手配しいざ手元に届いた愛車を見て、歓喜が一転して落胆へと変わった。エンジンはオイルと水漏れ、内装は欠陥部品があり、配線は剥き出し。足まわりもガタガタで、ボディはサビが出ている状態。
「ネットで見た写真では、そんな状態だったとは分からず……とにかくボロボロでした」
自分の手で少しずつ復活の道へ
程度の悪さを嘆くばかりでは何も始まらない。森さんは一念発起して、DIYにてこのミラTR-XXアバンツァートを復活させると決意したのだ。
錆が出ているボディはさすがにプロの手に委ねたが、できることは自分で修理する。しかも、修理しながら自分好みのカスタムも敢行。念願叶って手に入れた愛車を、3年ほどの時間をかけて現状まで仕上げたのである。
「カスタムは足まわりが中心です。ローダウンするために、フロントにシュピーゲルの車高調、リアはワゴンR用を流用しました。ホイールがワークのリーガルメッシュで、センターキャップは僕の好みでインパルを装着しています。しかも、ボディの鈑金をするついでに、リアフェンダーを広げました」
森さんのこだわり修理&カスタムは、教えてもらわないと気付かないほど、繊細な内容が多いのが特徴だ。例えば、インパルのセンターキャップ。
「実は日産車が好きで、Y31グロリアがメインカーです。インパルへの憧れは強いです!」
というのが理由なのだが、ボロボロで色が剥がれていたのを、自らIMPULというロゴ部分も含めて、細かく塗り直している。
また、広げたリアフェンダーは、見ても分からないのでは? と思うレベルのさりげなさがお見事。これで例のワークリーガルメッシュ14インチを、前後6J、オフセットはプラス30という設定で、綺麗なツライチにまとめたのだ。
アバンツァートはセカンドカーとして楽しむ
冒頭でも説明したが、購入の理由は、セカンドカーとして乗りたかったから。メインカーは日産「グロリア」(Y31系)とし、さらに、当時人気だったハイソカー、トヨタ「チェイサー」(GX71系)と、アウトドア用としてトヨタ「ハイエース」(100系)も所有しているとのこと。
「全てお気に入りのクルマなので、どれもちゃんと乗っています」
クルマ好きだった子供が、将来大人になったらあるべき姿の見本が、ここにあった。幼少の頃に所有して遊んでいたミニカーやプラモデルが、時間の経過と共に実車になっただけ。森さんの話しを聞いていると、「クルマが好き」という自分の本心に対して、純粋に心が赴くままに生きているような羨ましさを感じた取材であった。