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約4200万円で落札された日産「スカイラインGT-R」は長谷見昌弘が乗った伝説級のマシン!「IMPUL」との違いとは?

約4200万円で落札された日産「スカイラインGT-R」は長谷見昌弘が乗った伝説級のマシン!「IMPUL」との違いとは?

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TEXT: 武田公実(TAKEDA Hiromi)  PHOTO: 2023 Courtesy of RM Sotheby's

創成期JGTCのトップコンテンダーは、4200万円で落札

このR32GT-Rのストーリーは1994年初頭、NISMOとハセミモータースポーツがこのマシンをカーボンファイバー製ボディワークや大規模な構造補強、最前線でのポジションを確保するための新しい足まわりなど、競争力のあるGTレースカーに作り上げたところから始まる。

最大のライバルだった「IMPUL」のR32は、グループAツーリングカー時代から継承された4WDを選んだいっぽう、ハセミモータースポーツはフロント側のドライブシャフトを排除し、FR駆動を選択。この英断によって重量を削減するとともに、RB26DETTエンジンをより後方に搭載することが可能となった。そして、当時日本のモータースポーツでは珍しかったXトラック6速シーケンシャルトランスミッションを搭載し、高い競争力を獲得することになった。

「JGTC」こと「全日本GT選手権」が本格始動した1994年シーズン、仙台ハイランド戦では長谷見がスタート早々から15秒の大差をつけてポールtoウィン。その約6週間後、長谷見昌弘/福山英朗/羽根幸浩組のドライブでエントリーした「十勝24時間レース」でも、2位に10ラップの大差をつけてのポールtoウィンを果たした。

その後、1995年シーズン緒戦を闘ったのち現役を引退。ハセミモータースポーツによって徹底的な修復が施されたのちにチームのオフィスに展示され、1996年から2022年までワンオーナーだった。

このR32GT-Rは1994年シーズン用のレーススペックから一度も改造されておらず、REINIK(日産工機)がレース用に組んだRB26DETTエンジン、専用のECU、Xトラック社製シーケンシャル変速機、AP社製レース用ブレーキシステム、GT仕様のボディワーク、メカニカルパートや足まわりなど、レースで勝利をもたらした主要なコンポーネンツが、すべて今なお保持。ボディには、最後のレースで貼られたステッカー類も残っている。

ただし、燃料タンクはより耐久性優先のアルミニウム製に換装されたほか、過去2年間にわたり、完全な液体・油脂類のフラッシングをおこなったほか、燃料ポンプなどを新品に交換。また、傷みやすいガスケットやホース、フィッティングの交換など、最高の動作状態に戻すことを目的とした徹底した修復プロジェクトが施されたのち、世界のマーケットに売りに出されることになった。

ご記憶の方もあるかもしれないが、実はわずか1年3カ月前、2022年8月にはRMサザビーズ欧州本社の開催による「MONTEREY 2022」オークションにも出品されていた。この時は28万ドルで落札されたものの、翌23年にはイギリスのクラシックカースペシャリスト「Girardo & Co」から売りに出されていた。

そしてこのほど、同じRMサザビーズでも欧州本社による「LONDON」オークションでは、22万5000ポンド~27万5000ポンドのエスティメート(推定落札価格)が設定されたのち、11月4日の競売では23万ポンド、日本円に換算すれば約4200万円で落札されるに至ったのだ。

現時点で開催されているクラシックカーレースでは、このクルマがエントリー可能なものはまだなさそうながら、すでに「カルソニック」の青いグループA仕様R32GT-Rが走ったこともあった「グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード」のヒルクライムあたりでは、いずれその雄姿が観られることを期待しておきたい。

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  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 1967年生まれ。かつてロールス・ロイス/ベントレー、フェラーリの日本総代理店だったコーンズ&カンパニー・リミテッド(現コーンズ・モーターズ)で営業・広報を務めたのちイタリアに渡る。帰国後は旧ブガッティ社日本事務所、都内のクラシックカー専門店などでの勤務を経て、2001年以降は自動車ライターおよび翻訳者として活動中。また「東京コンクール・デレガンス」「浅間ヒルクライム」などの自動車イベントでも立ち上げの段階から関与したほか、自動車博物館「ワクイミュージアム(埼玉県加須市)」では2008年の開館からキュレーションを担当している。
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