後席用クーラー&クーラースイッチが備わっていた
一方でインテリアは、これはもう典型的なアメリカン・サルーンのそれ。フロントシートにはセパレートタイプ(5人乗り)とベンチシートで6人乗りとした2タイプを用意。コラムシフト、左から右に大きく指針が振れるスピードメーター(マイナーチェンジ後は丸型メーターになった)などを備えた。
またカタログを開いていくと、外観写真の次にまず後席の写真が出てくるのも、このクルマの性格を物語る。シートは高級モケット織りで、天井、サンバイザーも同じ布地が使われていた。さらに後席用クーラー&クーラースイッチ、後席用ヒーターダクトを備えるのも、当時の一般的な国産セダンとは差をつける設えだったといえる。
そして(ここまで話題を引っ張ってしまったが)このマツダ ロードペーサーAPでは、ロータリーエンジンを搭載した点が何といっても注目のポイントだった。搭載したのは当時のマツダのロータリーエンジンでは最大排気量(といっても654cc×2だったが)の13B型で、最高出力135ps / 6000rpm、最大トルク19.0kgm/4000rpmというもの。
当時の他のマツダ車同様「AP(アンチ・ポリューション=環境汚染防止)」と車名に付くように、排気ガスの熱を利用し未燃焼のCO、HCを再燃焼させ炭酸ガス、水蒸気に転換するサーマルリアクター方式を採用。マイナーチェンジモデルで当時の(昭和)51年排気ガス規制までクリアしたエンジンでもあった。
カタログによれば最高速度165km/hの性能を発揮。トランスミッションはトルコン方式の3速ATを組み合わせていた。
なお1975年4月の発売当時の車両価格は368〜371万円。1972年の2代目ルーチェが73.0〜117.0万円(発売当時)、当初レガートの名がつけられ1977年に登場した3代目ルーチェが99.6〜199.5万円(同)と較べれば、別格のクルマだったことが容易に想像がつく。ただしロータリーエンジンならではの静かさ、なめらかさは発揮しつつも、燃費性能など官公庁などで実際の運用での支障もあり、限られた台数のみで姿を消した。