ローワン・アトキンソンが最も愛するカーブランド
映画に登場する名車をストーリーとともに紹介する「映画とクルマ」。今回は、2003年に公開された『ジョニー・イングリッシュ』に登場するアストンマーティン「DB7ヴァンテージ」ををお届けします。
パロディ作品の中でも特に秀逸な一作
“アストンマーティン”と“ジェームズ・ボンド”は、しばしばイコールで結ばれる。アストンマーティンというブランドには、圧倒的な高性能や美しさ、そして栄光の歴史などの素晴らしい側面があるのは否定できまい。しかし、一般的なアストンマーティンのイメージとして“ボンドカー”が浮かぶのもまた、誰ひとりとて否定できない事実なのだ。
それ故に、アストンマーティン歴代のモデルたちは、『007』シリーズはもちろん、それをパロディ化した数々のコメディでも重要な役割を果たしてきた。今回はそんなパロディ作品の中でも、特に秀逸な一作を紹介したい。TV番組から映画化もされた『ミスター・ビーン』で、その地位を絶対的なものとした喜劇俳優、ローワン・アトキンソンの主演で2003年に公開された『ジョニー・イングリッシュ』である。
アトキンソン演ずるジョニー・イングリッシュは、英国秘密諜報部“M16”ならぬ“M17”に務める事務職員。しかし、いつか本物のスパイになってアストンマーティンを駆る日を夢見ていた。ある日ジョニーは、敵国の潜水艦への潜入調査を命じられたカリスマスパイ“エージェント1号”に、ハッチを開ける暗号コードを伝えることを命じられた。ところがジョニーの情報はまったくの嘘で、哀れエージェント1号は水死してしまう。
そして1号の葬儀には、M17の敏腕エージェントたちが集結したが、またもや葬儀の警備を担当したジョニーのミスで、テロリストの仕掛けた爆薬が炸裂。参列していたM17エージェントは全滅の憂き目を見る。この最悪の事態に、上司“ペガサス”は苦渋の決断を下さざるを得なくなった。それは、部内で唯一生き残ったジョニー・イングリッシュに、本物のスパイとしてのミッションを委ねることであった……。
V12エンジンを搭載するスーパーカー
この作品で登場するアストンマーティンは、映画の制作当時は現役モデルだったDB7ヴァンテージ。初代ヴァンキッシュと同じV12エンジンを搭載するスーパーカーで、ジョニーとともに大活躍するはずが、“お約束”のごときコント劇を演ずることになる。
スラップスティック的な超ドタバタ芸風で知られるローワン・アトキンソンだが、実はオックスフォード大学出身の秀才であることは有名な話。しかしその一方で、彼がヒストリックカーレースにも頻繁に出場する自動車愛好家であることはあまり知られていない。特にアストンマーティンは、彼が最も愛するブランドのひとつ。つまり、国際スパイに憧れるジョニー・イングリッシュが、スパイの象徴として何よりもアストンマーティンにこだわったのは、ローワン・アトキンソン自身の強い想いがキャラクターに投影されていたからに違いないのである。
劇中車:アストンマーティン「DB7ヴァンテージ」
生産年:1999年
いまも続くコンテンポラリー・アストンマーティンのデザインの源流はこのDB7から。イアン・カラムが担当した。
『ジョニー・イングリッシュ/Johnny English』
公開年:2003年
上映時間:87分
監督:ピーター・ハウイット
出演:ローワン・アトキンソン、ジョン・マルコヴィッチ、ナタリー・インブルーリア、ベン・ミラー