これからも注目されること間違いなしの1台
2023年12月8日、RMサザビーズがアメリカ・ニューヨークで開催したオークションにおいてブガッティ「ヴェイロン16.4」が出品されました。現在のオークションマーケットでの評価がいかほどなのか、同車について振り返りながらお伝えしましょう。
地球上で最も速く高性能なロードカー
ブガッティ・ヴェイロン16.4。スーパーカーのハイエンドを極め、さらにはハイパーカーなる新たなセグメントを築き上げたこのモデルを完全に理解するには、その開発を指揮した人物についても十分に理解しなければならない。
その人物とはフェルディナンド・ポルシェの孫であるフェルディナンド・ピエヒ。ピエヒは一族が立ち上げた会社での活動を皮切りに、ポルシェ906の開発に携わり、さらには1960年代後半から1970年代前半にかけて圧倒的な人気を誇ったポルシェ917へとつながるシャシー設計にも携わった。
1972年、ピエヒはアウディへと移籍。エンジニアリング部門のマネージャーとしてアウディ80、そして100を開発した。前者は1973年のヨーロッパ・カー・オブ・ザ・イヤーに輝き、後者はそれまでに生産されたアウディ車の中で商業的に最も成功したクルマとなった。
そして1977年、彼はアウディの世界ラリー選手権を指揮するに至っている。軽量なアルミニウム構造、ターボチャージャーの採用、そして何より4輪駆動のクワトロシステムの開発などを通じて、アウディはスポーツ・イメージとともに、そのブランド力を強めていったのだ。
1993年、ピエヒはVWの取締役会長に就任する。VWやアウディをさらに高級車ブランドに引き上げたほか、ベントレーやランボルギーニといったブランドを買収。さらには休眠状態にあったブガッティを手中に収め、新たにブガッティ・オートモービルズS.A.Sの設立に成功した。
その新生ブガッティ、すなわちVWグループで復活を遂げたブガッティが最初に市場に投じたモデル、ヴェイロン16.4は、あらゆる意味でそれまでの常識を覆したスーパーカーだった。彼らが生み出そうとしたのは、地球上で最も速く、そして最も高性能なロードカー。それは間違いなく最初のハイパーカーであった。