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メルセデス・ベンツ「300SLロードスター」がアウトローになっても1億7000万円オーバー!でも予想より1600万円以上も安かった

メルセデス・ベンツ「300SLロードスター」がアウトローになっても1億7000万円オーバー!でも予想より1600万円以上も安かった

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TEXT: 武田公実(TAKEDA Hiromi)  PHOTO: 2023 Courtesy of RM Sotheby's

アウトローを標榜しつつも、とてもエレガントな仕立て

今回のオークション出品にあたって、RMサザビーズは「メルセデス・ベンツ300SLロードスター “アウトロー”」というタイトル名をつけている。

この「アウトロー」とは、アメリカにおけるポルシェ356および「911」の愛好家あたりを端緒に、ここ数年のクラシックカー界で流行しているスタイル。現代的な技術を取り入れた、いわゆる「レストモッド」の一環なのだが、より「ワルっぽい」ワイルドさを前面に押し出したテイストのもののようだ。

しかし、この300 SLに限って言うなら、「アウトロー」を自認するわりにはお行儀の良さそうな雰囲気で、エレガントさも充分に残されているかに見える。

このモディファイは、今回のオークション出品者である現オーナーの手元に届いた直後、2016年から2017年にかけて、クラシック・メルセデスのスペシャリストであるラース・ロンベルスハイムの手によって完全なレストアが施された際に行われたもの。

ボディワークは総剥離ののち修復され、バンパーレスで再仕上げ。6気筒SOHCエンジンは、マッチングナンバーのブロックを残したまま、シリンダーヘッドを交換してリビルトされ、無鉛ガソリンで走行できるように改造された。そのうえガソリンタンクやフロントおよびリアのアクスル、ショックアブソーバーなど、そのほかの主要な機械部品もすべてオーバーホールされたという。

またオリジナルの4速MTに代えて、独ZF社製の5速ギアボックスを組み合わせるうえに、フロントのディスクブレーキ、ラッジ社製センターロック・ホイールへの換装、最新のオルタネーターと高トルクスターターを備えたイグニッションシステムのアップグレード、切替え可能なステンレス製エグゾーストなど、現代的なコンポーネンツが奢られることになった。

さらには、最新のラジエーターとオイルクーラーで冷却効率を高めたほか、「R8」インジェクションポンプとインジェクターが取り付けられた。そして米国仕様の3.89:1のファイナルレシオは、より快適なクルージングのために欧州仕様のデフォルト指定である3.64:1に変更されている。

いっぽうキャビンにはアルミニウム製のシェルを持つ「SLS」スタイルのシートが装備され、メーター類もkm表示のヨーロッパ仕様に換装された。

くわえて、新車時代からオリジナルの4速ギアボックス、トリムし直されたシート、シリンダーヘッド、ブレーキドラムとスタブアクスル、ステアリングホイール、保管前に再メッキした純正バンパーなど、レストアの際に取り外された多くのオリジナルパーツをスペアとして添付するほか、マッチングカラーのハードトップも付属品としてついてくるとのこと。またオリジナルのアメリカ登録書類のコピーや、アメリカに生息していた時代のインボイスや保険証なども添付されている。

メルセデス・ベンツ300SLロードスターは、自動車史における華やかな時代の象徴。とくにこの個体は、5速マニュアルギアボックスをはじめとする数多くの現代的なコンポーネントを搭載し、一流メーカーのスペシャリストによって多大な費用をかけて徹底的に美しく仕上げられた。

それらのセールスポイントをアピールしつつ、RMサザビーズ欧州本社は120万ユーロ~150万ユーロという、かなり強気のエスティメート(推定落札価格)を設定した。ところが2023年11月25日に行われた競売では、エスティメート下限を10万ユーロ以上も下回る109万6250ユーロ、つまり日本円に換算すると約1億7100万円で落札されることになった。

この価格は、やはりこのクラスの歴史的名作となると、オリジナリティが何よりも重視されることの表れかもしれない。しかし、元来300SLはこの時代のスーパースポーツとしては例外的に乗りやすく、信頼性の点でもかなり優れていることから、その資質をさらに高めることで日常的にももっと楽しみたいという考え方も、充分に理解できるのだ。

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  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 1967年生まれ。かつてロールス・ロイス/ベントレー、フェラーリの日本総代理店だったコーンズ&カンパニー・リミテッド(現コーンズ・モーターズ)で営業・広報を務めたのちイタリアに渡る。帰国後は旧ブガッティ社日本事務所、都内のクラシックカー専門店などでの勤務を経て、2001年以降は自動車ライターおよび翻訳者として活動中。また「東京コンクール・デレガンス」「浅間ヒルクライム」などの自動車イベントでも立ち上げの段階から関与したほか、自動車博物館「ワクイミュージアム(埼玉県加須市)」では2008年の開館からキュレーションを担当している。
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