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トヨタ初代「GRヤリス」オーナーには刺激が強すぎる! マイチェンではなくて「進化型」と呼ぶにふさわしい完成度のヒミツとは?

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TEXT: 橋本洋平(HASHIMOTO Yohei)  PHOTO: 木村博道/TOYOTA GAZOO Racing

  • 正面向かって左にはサブラジエター、右にはATFクーラーを配置。フォグランプの設置ポジションは無くなったが冷却効果アップが狙える
  • サイドフォルムに大きな変更は無い。スッキリとしたイメージの新型フロントバンパーとのつながりも美しい
  • リアバンパー中央下部のダクトが大きくなり、エアの抜けが良くなっていることはもちろん、視覚的にもインパクトがある
  • 進化型GRヤリスのリアスタイル
  • エンジントルク図
  • シートポジションを25mm下げ、ステアリングチルトの幅も大きくなったことで、理想的なドライビングポジションをつくることができる
  • RCグレードにはオプションで、パーキングブレーキの配置変更を行うことができる
  • ボディとショックアブソーバーを締結するボルトの本数を1本から3本に変更した
  • スポット溶接打点を13%増加、構造用接着剤の塗布部位を約24%拡大することにより、ボディ剛性を高め、操縦安定性と乗り心地を向上する
  • エンジン出力を200kW(272ps)から224kW(304ps)へ、トルクを370Nm(37.7kgf-m)から400Nm(40.8kgf-m)へ向上した
  • ドライブモードセレクト(NORMAL/ECOモード)
  • 【緑点灯:認知】インジケーター点灯速度によりリズムを図る。【赤点灯:判断】シフト準備
  • 【青点滅:操作】シフトアップ
  • ドライブモードセレクト(SPORTモード)
  • ロアグリルのメッシュは、薄型・軽量化と強度を両立するスチールに変更された
  • GR-DATイメージ画像
  • 大きく変更されたインパネまわり。スポーツカーのコクピットのあるべき姿を具現化したものだ。12.3インチフルカラーTFTメーターを採用する
  • Direct Shift8速ATは、幅広いドライバーがスポーツ走行を楽しめることを目指して開発された。モータースポーツシーンでMTと同等に戦えるATになっている
  • ダートコースではスポーツ4WDシステム“GR-FOUR”が威力を発揮する。外観は先代のままだが、中身は新型にアップデートされているモデルを試乗

モータースポーツ直系の開発が行われている

2020年の夏に登場したトヨタ「GRヤリス」がマイナーチェンジを行なう。トヨタではそれをマイナーチェンジとはうたわず、あえて「進化型」と表明。デビュー以来、スーパー耐久に参戦したほか、全日本ラリー、さらにはこのクルマをベースにしたWRCまで、ありとあらゆるカテゴリーで鍛え上げて見えてきたノウハウが、いま市販車に舞い降りてきたのだ。すなわち、これは単なるマイナーチェンジじゃない。モータースポーツ直系の自動車開発をいま目の当たりにしているのだ。今回はそのプロトタイプを袖ヶ浦フォレストレースウェイで試す。

新開発8速ATは世界トップレベルの変速速度を実現

のっけからかなりハードルが上がり気味だが、進化型GRヤリスのポイントはマニアックなものばかりじゃない。その最たるものが2023年のスーパー耐久もてぎラウンドで走ったものがベースとなる新開発8速ATだ。Gazoo Racing Direct Automatic Transmission(以下GR-DAT)は、スポーツ走行を多くの人に楽しんでもらおうという想いが込められ、単なるイージードライブではなく、プロドライバーと同じ感覚で走れるように、ドライバーの意思を読み取るものに仕上げたという。

これまでは速度や減速Gによるシフト制御としていたが、ブレーキの液圧変化やアクセルコントロールを読んでシフトを制御。もちろん、パドルによる操作も可能となるが、その場合もギアをしっかりとホールドし、勝手にシフトアップが行なわれないようにしている。さらに高応答リニアソレノイド、変速用クラッチに高耐熱湿式摩擦剤を採用したほか、ギア比のクロスレシオ化、ソフトウエアの改良により、世界トップレベルの変速速度を実現しているようだ。

ダッシュボードやシートポジションなどが一新された

もうひとつの進化のポイントはコクピットだ。ダッシュボードまわりを刷新し、まるで異なるクルマに変化したかに感じられる仕上がりは、プロドライバーの意見に耳を傾けて作り上げてきたものだという。操作パネルとディスプレイをドライバー側へ15度傾けて設置。ドアに備わるパワーウインドウのスイッチまわりは、フルハーネスを締め上げていても操作できるように手前へと迫り上がるようにセットされている。また、助手席側の小物置きは、じつは追加メーターを置けるようなサイズに仕上げるなど、今後の競技のことまで見据えた作り。さらに、メーターは12.3インチのフルカラーTFTメーターを採用し、視認性や警告などがわかりやすく表示されている。センタークラスター上端を50mm下げ、さらにルームミラーを上に引き上げたことで、前方左側の視認性も向上している。

これだけでも十分だと思わせる内容だが、さらにドライビングポジションを25mmも下げ、それに合わせたステアリングのテレスコ&チルトの量も変更したところが凄い。結果として事実上のマイナーチェンジであるにも関わらず、衝突試験をやり直しているというから驚きだ。

さらに細かいところで言えば、ATセレクターはMTと同様の位置にくるように75mm(GRヤリスRS CVT仕様比)も上昇させている。また、RC(競技ベースモデル)は、シフトレバーをドライバー側のシフトレバー脇に備える(オプション)など、これまでのトヨタでは見たことのなかったトライをしているところも興味深い。これなら油圧サイドブレーキいらずか!?

最高出力32ps/最大トルク30Nmアップした

進化ポイントはまだまだ終わらない。続くはエンジンだ。現行の最高出力272ps/6500rpm、最大トルク370Nm(37.7kgf-m)/3000~4600rpmから、進化型は最高出力304ps/6500rpm、最大トルク400Nm(40.8kgf-m)/3250~4600rpmへ。サーキットモードではアンチラグも作動させ、レスポンス向上も行なっているという。

ちなみにこのサーキットモードではスピードリミッターの解除やクーリングファンの出力最大化なども行なう。これに合わせるかのようにフロントバンパー開口部は広げており、ドライバー側にはサブラジエター、ATモデルは助手席側にATFクーラーを搭載。排気まわりも大型に変更となったため、リアバンパーも変更となり、バックフォグは上へと移設されている。

サスペンションやボディに対しても変更内容は多い。フロントのアッパーサポートは1点締結から3点締結へ。スポット打点は開口部などを中心に10%アップ。構造用接着剤の更なる投入も行なった。また、電動パワーステアリングをさらにリニアな特性へ。ショックやスプリング、そしてフロントスタビライザーも変更されている。

加えて前後のトルク配分を可変する4WDモードセレクトスイッチの内容も改められた。現行型はNORMALが60:40、SPORTが30:70、TRACKが50:50。進化型はNORMALが60:40、GRAVELが53:47、TRACKが60:40~30:70までの可変が盛り込まれた。

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