アメリカで歴史を重ねた確かなヒストリー
1972年4月に製造されたこのシリーズ IIエスパーダは、シャシーナンバー#8726。1968年から1978年にかけて生産されたエスパーダのうちの670台目とされる。
「セナーペ(辛子)」と名づけられたライトブラウンの本革インテリアに、明るいグリーンのメタリック「ヴェルデ・パリド」のボディカラーというエレガントなリバリーで仕上げられ、長大なボンネットの下にはシリーズ IIスペック、350psを発生する4.0LのV型12気筒エンジンが搭載され、5速マニュアルギアボックスが組み合わされた。
インペリアル(マイル表示)スピードメーターとオプションの「ヌォーヴァ・ソスペンシオーネ」を装備したシャシーナンバー#8726は、1972年5月30日にニューヨークの「モデナ・スポーツカーズ」社を介して、コレクターのヤン・バッツに納車された。
1981年3月、以前のイリノイ州での所有権はヤン・バッツの家族であるトッド・バッツに移ったが、このエスパーダは2006年まで家族のコレクションとして愛蔵されることになる。
2006年11月、カリフォルニアの「ラグジュアリーカーズ・ロス・ガトス」社を介して前オーナーが入手したこのエスパーダは、今回のオークション出品者である現在のオーナーに譲渡される2015年初頭まで保有された。
そして現オーナーの依頼のもと、2021年に「レトロ・スポルティーヴァ」社によってエンジンのリビルドが行われ、その際には6万ユーロを超える請求書が発行されたとのことである。
現在、このエスパーダ・シリーズ IIは、マッチングナンバーのV型12気筒エンジンとともに、ヴェルデ・パリド外装/セナーペ革内装という工場出荷時のカラーリングを維持している。ボディナンバーは車内のさまざまなパネルで発見され、その写真は添付されるファイルで閲覧することができる。
このクルマは、エスパーダの中でも極めて保存状態の良い1台であるとともに、当時のマニュアルやパンフレット、ランボルギーニとベルトーネそれぞれの塗装とレザーのオリジナルサンプルも含まれている。
また2017年7月の段階で、新車から2万4644マイル(約3万9400km)しか走っていなかったようだが、この時点でオドメーターはドイツ国内の道路交通法規制に適応させるためにメートル表示ユニットに交換されている。それ以来、このクルマはオークション公式カタログ作成時の数値に見合う、わずか683kmしか走行していない。
ちなみにオリジナルの古いオドメーターは、スマートな当時モノのツールキットとともに、オークション出品時には車両に添付されていた。
このヒストリーの確かさと現状のコンディションに自信を得ていたのか、RMサザビーズ欧州本社は現オーナーとの協議のもと、16万ユーロ~20万ユーロというエスティメート(推定落札価格)を設定。また、入札が跳ね上がることを期待して「Offered Without Reserve」、つまり最低落札価格を設定しないことにした。
ところが実際の競売ではビッド(入札)が進まなかったようで、エスティメート下限を大きく割りこむ14万7200ユーロ。日本円に換算すれば約2320万円での落札に終わってしまい、売り手の期待は裏切られることになってしまった。
ただしこのハンマープライスは、この1~2年におけるエスパーダのマーケット相場価格から大きく乖離したものではなく、落札者にとってはなかなかリーズナブルなものだったとみるべきだろう。