ユニークなデザインが特徴的なKa
2016年に日本市場から撤退したフォードだが、その質実なクルマのキャラクターに惚れ込んで今なお乗り続けるオーナーは少なくない。そんな熱心なフォード・ユーザーらが中心となって開催されているのが、ヨーロッパフォードミーティングだ。今回で第8回目となる「ヨーロッパフォードミーティング2023」が開催されたのは、2023年11月4日(土)のこと。静岡県浜松市の浜名湖ガーデンパーク南ロータリーがその会場だ。イベント当日には約50台の新旧ヨーロッパ・フォードと熱心なオーナーが全国から駆けつけたが、その中には3台のフォード初代「Ka(カー)」もいた。
当時の価格は150万円
アメリカ本国、ヨーロッパを問わず、フォードが生み出すクルマはいずれもプラグマティズムの権化、かのT型の遺伝子を色濃く備えている印象が強いが、その反面、時として一風毛色の変わった個性的なモデルをリリースすることもある。
そんな大フォードが1996年のパリ・サロンで発表した「変化球」が、Ka(カー)である。当時ヨーロッパ・フォードのロワーレンジを担っていた小型車「フィエスタ」のプラットフォームを用いて作られたカジュアルな派生モデルというのがその成り立ちであるが、このKa最大の特徴といえば、やはりそのユニークなデザインであろう。
当時のフォードは張りのある面と鋭角なエッジが特徴の「ニューエッジデザイン」と呼ばれる共通のテーマでデザインを推し進めていた時代。なかでも特に有名なのは1998年に登場した初代「フォーカス」であるが、その尖兵ともいえるのがこのKaだった。
日本でも1999年から予約販売が開始されたKa。当時の価格は150万円と輸入車としてはリーズナブルで、その手頃な価格は斬新なデザインとともにクルマ好きの間で話題となった。しかしベースのフィエスタに比べて好き嫌いの別れる個性的なデザインや、AT車が用意されなかったということもあり、爆発的なヒットとはいかなかった。
しかし、このKaが「ニューエッジデザイン」の露払いをした結果、この後のフォーカスの大ヒットにつながったと言えるのではなかろうか。前述の通り今回のヨーロッパフォードミーティング2023には、そんなKaが3台が参加していたのだが、そのうちの1台のオーナーの方にお話を伺うことができた。
今見ても古さを感じさせない斬新なデザイン
「それ以前はクラシック ミニに乗っていたのですが、Kaの独特なスタイルに惚れて、1999年の発売時に新車で購入しました。かつては毎日の通勤に使っていましたが、定年後は普段使いと、このようなイベント参加がKaとの主な付き合い方となっています」
というのはオーナーのイチローさん。ボディのコンディションがとても良好なのでその点をたずねると、2012年に全塗装を行ない、それ以降は毎年コーティングを行なっているとのこと。
この年式のKaは「エンデュラE」と呼ばれる1.3Lエンジンを搭載しているが、これは古い英国車ファンにはお馴染みの「フォード・ケント・ユニット」と呼ばれるOHVエンジンの末裔。そのルーツはじつに1958年にまで遡るという傑作長寿エンジンだ。基本設計は古いエンジンだが、燃費は街中で13km/L、高速では20km/L弱くらいと、まずまずの数字だという。
その基本性能と、今見ても古さを感じさせない斬新なデザインに満足しているというイチローさん。
「消耗パーツは海外から引っ張ったり、国内で中古パーツを探したりしています。傷んだマフラーを交換しようと探したときは、国内に2本だけ残っていたパーツのひとつを手に入れることができました」
新車で購入して以来四半世紀近い時が経つKaだが、好調を維持するにはそれなりの努力と愛情は必要。
「タイヤサイズは165/65R13という最近ではあまり見ないサイズなのですが、先日交換したばかりなので、このタイヤがすり減るまでは、また当分の間乗り続けると思います」
というイチローさんなのである。