レギュレーション変更に対応しつつ王座をキープし続けたポルシェ
FIAの下部組織でモータースポーツの車両規則などを制定している国際スポーツ委員会(CSI)は度々スポーツカーの世界選手権のレギュレーションを変更。1976年にはグループ5、いわゆるシルエットフォーミュラを主役に据える世界メーカー選手権とグループ6の純レーシング・オープン2シーターによる世界スポーツカー選手権を並行して開催することとしています。
ポルシェはこれにも素早く対応し、グループ5にはポルシェ「935」、グループ6にはポルシェ「936」を投入しています。911(930型)をベースにグループ5として仕立てたシルエットフォーミュラが935、同じエンジンを搭載したオープン2シーターのレーシングマシンが936。ちなみにGTカーとしてホモロゲーションを受けたグループ4は「934」と命名されていました。
いずれにしても935も936も、そして934も、それぞれのカテゴリーで最強マシンの名をほしいままにしていました。そうした状況も手伝ってか、CSIから組織が改変されて誕生した国際自動車スポーツ連盟(FISA)は1981年には、それまでの車両規定を一新してグループCを誕生させるとともに、WSCをグループCが主役の燃費制限を課した世界耐久選手権(WEC)として開催させることにしました。
このグループCへの移行に、最も素早く対応したのもやはりポルシェでした。前年のル・マン24時間で936に搭載して実戦テストを行い、見事優勝を果たしていた2.65Lツインターボの水平対向6気筒エンジンを、ポルシェのレーシングカーとしては初となるアルミ・モノコックに搭載したポルシェ「956」は、デビューシーズンにおいて5戦のうち3勝を挙げてマニュファクチャラー・タイトルを獲得するとともに、8戦のうち4勝を挙げたジャッキー・イクスがドライバーチャンピオンに輝いています。
以後も圧倒的な速さと強さを見せつけた956は、安全規定が強化された1985年には新規定に順応した「962C」に移行し1986年まで5シーズン連続してグループCを連覇。国内では1983年から始まった全日本スポーツプロトタイプカー耐久選手権(JSPC)でもポルシェ956/962Cが大活躍。初年度の1983年は3戦3勝とパーフェクト。1984年はタイトルを逃したものの4戦3勝と最多勝をマーク。そして1985年から1989年まで5連覇を果したのです。
今回「箱車の祭典2023」に参加したゼッケン25号車は2023年亡くなった高橋国光選手がスタンレイ・ディケンズ選手とコンビを組み1989年にシリーズタイトルを獲得したクルマそのもの。レッド&ブラックのADVANカラーは、当時の圧倒的なパフォーマンスを思い出させるに十分なものがありました。