二刀流のクルマ作りに邁進するようになったフォード
2016年に日本市場から撤退したあとも、その質実なクルマのキャラクターに惚れ込んだオーナーは多く、今なお根強い人気のヨーロッパ・フォード。その熱心なユーザーらが中心となって2023年11月4日に開催されたのが「ヨーロッパフォードミーティング2023」だ。今回で第8回目となるこのイベントが開催されたのは前年同様、静岡県浜松市の浜名湖ガーデンパーク南ロータリー。イベント当日には約50台の新旧ヨーロッパ・フォードと熱心なオーナーが全国から駆けつけたが、その中でもホモロゲーション・モデルらしい迫力の佇まいで周囲を威圧していたのが、こちらの「シエラRSコスワース」だった。
名門コスワースの手によって徹底的に強化された
いささか旧聞に属するが、3年ほど前に封切られた映画『フォードvsフェラーリ』でも描かれていた1960年代フォードの、モータースポーツ分野での世界制覇の野望。もちろんその頂点はフォード・コスワースDFVエンジンによるF1界制覇と、プロトタイプ・スポーツ「GT40」によるル・マン制覇であるわけだが、そのほかにもツーリングカー・レースからラリーまで、1960年代のフォードがモータースポーツに投入したパワーは桁外れだった。以来、フォードは「質実で朴訥(ぼくとつ)な実用ツール」というT型以来のキャラクターに加え「勝利のための過激なスポーツモデル」という性格のクルマも生み出すという、いわば二刀流のクルマ作りに邁進するようになる。
本国アメリカのフォードの現地法人としてスタートした英国フォードとドイツ・フォードは、やがてそれぞれの国情に合わせた独自モデルの開発を行い、さらにその2社が統合して1967年に生まれたのがご存知ヨーロッパ・フォードだ。ヨーロッパ・フォードもまた質実な実用車を作る一方で、それらをベースとした競技用の過激な派生モデルを多数送り出してきた。
そんな歴代スポーツ・フォードの中でも1980年代を代表する1台がフォード「シエラRSコスワース」だろう。1982年にデビューしたヨーロッパ・フォードのミドルセダン、シエラをベースにグループA規定のホモロゲーション取得用の派生モデルとして1986年にデビューしたシエラRSコスワース。その名の通り、その中身は名門コスワースの手によって徹底的に強化されている。