純白ポルシェコレクションの944 S2カブリオレ
昨2023年12月1~2日、RMサザビーズ北米本社がアメリカ合衆国テキサス州ヒューストンにて開催した「The White Collection」オークションでは、さる匿名の売り主から、主にポルシェにまつわる500点以上のロットが出品された。そのなかで自動車は63台。さらにポルシェのスポーツカーが56台を占め、オークションタイトルのとおり大部分が真っ白なボディカラーを持つ個体とされていた。今回はそのなかから、ポルシェ「944 S2カブリオレ」のモデル概要とオークション結果について、お話しさせていただくことにしよう。
924から進化を続けた944のファイナルモデル
市販ポルシェとしては初となるFRレイアウトを採用し、1975年に登場した「924」は、エントリーモデルとして一定の成功を収めるも、「アウディ100」と基本を一にするエンジンなどが「ホンモノのポルシェ」としてはもの足りないというかなり辛辣な評価も、当時の識者やメディアから下されていた。
そこでポルシェでは、1978年にはターボ過給を施した「924ターボ」を追加。さらに4年後の1982年秋には、1983年モデルとして、924ターボのレーシングモデルに端を発するワイドボディに、ポルシェ自社開発の直列4気筒SOHC・2.5Lエンジンを搭載した「944」を上級モデルとして設定するに至った。
944に搭載されたエンジンは、この時代におけるポルシェ最上級FRモデル「928」用のV型8気筒SOHCユニットの片バンクを切り落としたもの。2.5Lの大排気量4気筒ということで、不可避的な振動を極力避けるために、三菱自動車から「サイレントシャフト」のテクノロジーを導入したバランサーシャフトを組み入れていた。
さらに、ポルシェのカタログモデルにとって、初のDOHC・4バルブヘッドを採用した「928 S4」用エンジンが1985年に登場すると、1987年にはその片バンクを使用する944のエンジンにも同じDOHCヘッドが奢られることになった。
「944 S」と命名されたこの高性能版は、2.5Lの排気量はそのままに、スタンダード944から35psアップに相当する190psのパワーを獲得。1985年に先行デビューしていた「944ターボ」とともに、944シリーズ高性能モデルの二枚看板となる。
さらに1989年モデルとして、944 Sの4気筒16バルブエンジンを2990ccに拡大し、211psにスープアップ。944ターボと同じ内外装の設えとしたのが、944 S2であった。
いっぽう「オープンカー冬の時代」と称される1970年代に生まれた924系はもちろん、944系も長らくクローズドクーペのみの体制とされていたのだが、944S2では「911カブリオレ」の登場から遅れること6年、FRポルシェとしては初めてソフトトップ式フルオープンの「944 S2カブリオレ」が設定されることになった。