ケータハムの新型がお披露目
チューニングカーやカスタムカーの世界を広く知らしめるべく始まった「東京オートサロン」も2024年で42回目。今や日本国内はもとより海外からも多くのメディアが取材に訪れる国際的なイベントとなり、2000年代に入ると欧米の自動車メーカーなど海外からの出展も見られるようになった。そんな中、今回のショーで本邦初公開となったのがケータハムカーズの新型電気自動車「ケータハム プロジェクトV」である。
本邦初公開されたのはEVスポーツカー
ご存知の方も多いと思うが、ケータハムカーズとは英国の小規模スポーツカーメーカー。その社名は、1987年にケント州に移転するまでサリー州ケータハムに会社があったことに由来する。「ケータハム21」などごく一部の例外を除き、このメーカーが作っているクルマは昔も今も「セブン」だけである。
そしてそのケータハム セブンは、ロータス「マーク6」の後継モデルとして1957年のロンドンショーでデビューしたロータス セブンがそのルーツ。1973年にロータスがセブンの生産中止を決めた時、長年ロータス セブンのディーラーを営んでいたグラハム・ニアーンがそのリソース一式を引き取りセブンの生産・販売を継続、以来半世紀にわたってコーリン・チャップマンが「卒業」したニッチなマーケットに向け、小改良を加えつつケータハム セブンを作り続けてきたというわけだ。
2024年1月12日、東京オートサロン初日の午前10時45分。幕張メッセ北館、ケータハムカーズ・ジャパンのブース前には多くのプレスが陣取ってそのアンベールの瞬間を待ち構えていた。全く新しいBEVスポーツカー「ケータハム プロジェクトV」が本邦初公開されたのである。
ケータハムカーズがセブンを作り始めて半世紀の節目となる昨年2023年、英国で開催されたヒストリックカー・イベント「グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード」の会場で世界初公開されたケータハム プロジェクトVが、この度日本でも公開されることとなり、そのステージに選ばれたのがこの東京オートサロンなのだ。ファントゥドライブ、軽量・シンプルというセブンの遺伝子を受け継ぎつつ、ケータハムの考える近未来のスポーツカー像を具現化した電気スポーツカーだ。
後席も備えたピュアスポーツ
ドライバーの低い着座位置を確保するため、バッテリーは車体の前後に2分割し搭載。サスペンションは四輪ダブルウィッシュボーンで、200kW(272ps)のモーターで後輪を駆動する。また、運動性向上のため重量物は全てホイールベース内に収められているという。
アンベールのステージにはデザインを担当したフランス出身のデザイナー、アンソニー・ジャナレリ氏が登壇。BEVだからこそ成し得た伸びやかなプロポーションや現行セブンのノーズコーンのイメージを投影させたというフロントノーズの開口部、そして液晶ながらあえてアナログ風丸メーターに仕上げたインパネなど、クラシックとモダンを巧みに融合させたというデザインの意図を身振り手振りを交え自ら語ってくれた。
興味深いのはタイトながら後席も用意されていること。3シーターか4シーターかを選べる。+2のスポーツ・クーペといえば、ロータスがストイックなピュアスポーツから豪華・安楽・快速GT路線も視野に入れ始めた時代にリリースされた往年のロータス「エラン+2」を連想するが、しかしケータハム自身は今までと同様、あくまでシンプルなピュア・スポーツカーを標榜し続けるという。
お披露目されたケータハム プロジェクトVはあくまでもコンセプトモデルではあるが、その完成度の高いデザインも含め、基本的な構成は市販モデルと大きくは変わらないようだ。実際の発売は2026年を目指しているそうだが、現在想定されているカーボン製モノコック・シャシーなどはアルミ素材に変更される可能性もあるそうだ。
フルEVかPHEVか、電動か内燃機関か。はたまたディーゼルか蒸気か……。じつはわれわれクルマ好きにとっては、そんな議論はあまり意味がないことかもしれない。われわれが望むのは畢竟、見た目に心地よく、運転して楽しく、なにより「欲しい」と思わせる、クルマそのものが持つ根源的な魅力なのだ。そして、それらすべての条件を満たしているように思えるケータハム初のEVコンセプトカー、プロジェクトV。その市販モデルのステアリングを握れる日が待ち遠しい。