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ポルシェ「944ターボ」が驚きの2400万円! プアマンズポルシェがどうして相場よりも高額だったでしょうか?

ポルシェ「944ターボ」が驚きの2400万円! プアマンズポルシェがどうして相場よりも高額だったでしょうか?

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TEXT: 武田公実(TAKEDA Hiromi)  PHOTO: 2023 Courtesy of RM Sotheby's

やっぱり“レンシュポルト”効果は格別? スタンダードとは比較にならない高価落札

1987年に北米に送られた944ターボ・カップはわずか11台とされるなか、今回の「The White Collection」オークション出品車は、オハイオ州南西部の個人オーナーに新車として引き渡された個体。しかし正真正銘の「カップカー」であり、ポルシェの鑑定書により「コード754」ターボ・カップ・パッケージの1台であることが確認されている。

ただしこの個体に添付する記録簿によると、最初の販売から少なくとも数年間は、初代オーナーによって公道走行に供されていたことが判明しており、今回のオークション公式カタログ作成時の走行距離は1万9635マイル(約3万1400km)を表示している。

また、1987年までさかのぼるメンテナンス請求書が保管されており、納車から数十年間にわたって、継続的なメンテナンスが行われていたことがわかる。

しかし2018年になって、初代オーナーは30年以上も保有してきた944ターボ・カップとの別離をついに決意。そして「ホワイト・コレクション」へと譲渡された以降は、さまざまな機械システムの適切な機能を確保するために、毎月の間隔で始動点検を受けていたとの由である。

塗装膜の状態を計測できるペイントメーターで確認すると、「アルパイン・ホワイト」の純正ボディペイントはボディパネルの金属部分全体が新車当時まま維持されており、ボディワークのオリジナリティの高さを示している。

また興味深いことに1988年の資料によると、グラスファイバー製のエンジンフードは素材の違いのせいか、工場出荷時からほかのスチールパネルとはわずかに異なるホワイトの色合いとなっていたとのことだが、そのディテールは現在でも見ることができる。

隠れた傑作として知られる944ターボのなかでも、もっともエクストリームな派出モデルの1つであるこのカップカー。しかも、レース歴がなくオリジナルのまま維持されている希少な1台には、オーナーズブックや純正工具、ドキュメントバインダー、ポルシェの鑑定書、当時の請求書や通信、アクセサリーの数々が添付されている。

そしてRMサザビーズ北米本社は出品者との協議の結果、14万ドル~18万ドルのエスティメート(推定落札価格)を設定。その上で「Offered Without Reserve」、つまり最低落札価格は設定しなかった。

この「リザーヴなし」という出品スタイルは、たとえビッド(入札)が出品者の希望に達するまで伸びなくても落札されてしまうという不可避的なリスクもあるかたわら、金額を問わず確実に落札されることからオークション会場の雰囲気が盛り上がり、ビッドが進むことも多い。

こうして迎えた競売では順当にビッドが伸びたようで、エスティメートに届く16万2400 ドル、日本円に換算すると約2400万円でハンマーが落とされることになった。

スタンダードの944ターボの国際マーケット価格が、安いものなら2万ドルくらい。高いものでも7万ドルくらいに収まっている現況と比較すると、やはり希少なレース系役モノのポルシェ「レンシュポルト」には、市販ロードバージョンとは格別の評価が下されるということなのであろう。

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  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 1967年生まれ。かつてロールス・ロイス/ベントレー、フェラーリの日本総代理店だったコーンズ&カンパニー・リミテッド(現コーンズ・モーターズ)で営業・広報を務めたのちイタリアに渡る。帰国後は旧ブガッティ社日本事務所、都内のクラシックカー専門店などでの勤務を経て、2001年以降は自動車ライターおよび翻訳者として活動中。また「東京コンクール・デレガンス」「浅間ヒルクライム」などの自動車イベントでも立ち上げの段階から関与したほか、自動車博物館「ワクイミュージアム(埼玉県加須市)」では2008年の開館からキュレーションを担当している。
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