国さんの功績を後世に遺したい
去る2023年10月29日に富士スピードウェイを会場として『POWER&TORQUE』という名のイベントが開催され、その中で箱車レーシングカーの走行枠が設けられました。『箱車の祭典2023』と銘打って実施された走行枠は、1990年までの純レーシングカーによるClass 1と、1990年までの市販車ベース車両によるClass 2が設定され、前者はGr.CカーやGCカーなど、後者はツーリングカー、TS、ワンメイク車両などが対象となりました。
自分が造ったレーシングカーに国さんが乗ってくれた
高橋国光選手への追悼ランとしてClass 2でコースインした日産スカイライン GT-Rは、1972年式をベースとし、ハコスカ専門店のVICTORY50(内田モーターワークス)代表の内田幸輝さんが製作したもので、国さんのことを愛してやまないレーシングドライバーの土屋圭市さんもドライブ。 秋晴れの富士スピードウェイを愛弟子のドライブで全開で走るS20エンジンのエキゾーストノートを天国の国さんに届けることができた。
「国さんとハコスカのことが好き過ぎて、GT-Rの50勝記念車を1980年代に製作しました。国さんと初めて会ったのは1999年のことで、引退式典のときにこの50勝記念車をドライブし、富士スピードウェイの50周年のときもハコスカの50勝で祝いたいと再び乗ってくれました。今回は土屋さんが乗ってくれたので、もうひとつの夢も叶いました。自分のクルマが全開で走っている姿を見る機会はなかなかないので、国さんが走っているような気分になりましたよ」
そのように話してくれた内田さんによると、国さんが現役バリバリのレーシングドライバーとしてハコスカに乗っていた頃からテレビで観ていたらしく、その後、実際に会った国さんは人としてもドライバーとしても大変尊敬できたそうだ。
「国さんは神様。自分が造ったレーシングカーに国さんが乗ってくれるとは夢にも思いませんでした。50勝記念車はJCCAで実際にモータースポーツをやっていたので、ミッションは直結5速のクロス、カムはレーシングで、筑波、富士、鈴鹿でデフを交換するなど、セッティングを変更して本気で走っています。安全装備もしっかりしており、常に一週間前から各部を調整していたので、国さんも安心して飛ばしてくれました。今回も追悼ランをするためにずっと整備していましたよ。ブレーキは新品。スリックタイヤも新品。サイドマフラーは直管を造ってきました。国さんの功績を後世に遺したい、国産車の素晴らしさや歴史を知ってもらいたい、イイ音させて気にしてもらって、若い人たちには、このクルマは何? というところから入ってもらって、ベテランには懐かしいよね、と思ってもらえればいいと考えている」
内田さんは、このようにも話してくれた。
「モータースポーツの歴史を今回の箱車の祭典のようなイベントで知ってもらうのは大事なことだよね」
次回の箱車の祭典に向け、いろいろ考えているとのことだったので、何を披露してくれるのか期待したいと思う。