3kWの普通充電で約12時間の船旅
いよいよ乗船となりトラックなどを置く甲板を通り過ぎて乗用車甲板に行く。そして壁際に行くと普通充電器が用意されている。コネクターを車両に繋ぎスイッチを押す。カード認証などはなく充電が開始される。操作はいたって簡単だ。
このスイッチは押した感触が若干わかりにくいが、ランプの点灯や点滅で状況を示してくれる。操作パネルだけでなく車両の通電状況なども確認すれば、充電が開始されたのが確実に分かるだろう。
今回この船内での充電を行うため、わざと道の駅 童話の里くすから別府までの間で充電を行わず、さらに別府市内でも電気を消費していくようにした。そのため別府市内で電気が減っていると、思わず充電したくなる衝動にかられるがここはぐっと我慢したいところだ。なるべく電池が空の状態からの方が充電効率が良いと言われているのと、充電がどのくらい行われるのか検証するという意味合いのため消費させてきた。
別府港を夕方6時45分に出航し、大阪南港に朝6時35分到着するため約12時間の船旅だ。船内の充電は30%からスタートして、12時間あれば3kWの出力であっても満充電になるだろう。
最新フェリーの中は豪華ホテルのような快適さ
船内に入り予約した部屋に行ってみる。今回は空席の都合上スーペリアツインの部屋を利用したが、スイートからプライベートベッドまで約20種と多様な部屋が用意されている。部屋の種類と車両の大きさにより金額は変わるが、今回のように車両1台(5~6m未満)と乗員1人分で、仮にシングルルームを利用する場合、4万2550円(2024年1月~3月、スーペリアシングルをA期間にインターネット予約で利用した場合の運賃)となる。金額を抑えたい場合は部屋のグレードを考慮していけば良い。
別府港から大阪南港まで高速料金と比べると船旅の方が高いと思われるかもしれないが、12時間のゆっくりとした旅が味わえるほか、高速道路での充電の不安、走り続けることでの疲労に比べると、船旅はなんともゆったりしていて疲れないのが良い。
辺りが暗くなった夕方6時45分に出航の合図となるドラが鳴り響き別府港を出航する。デッキに出てみると別府港の職員のみなさんがお見送りをしてくれた。これも船旅ならではの光景と思うと、こちらも思わずスマホのライトを点けて応える。一期一会の旅ならではだ。
船内にはレストランが用意されており、ビュッフェ形式で料理が並ぶなかには大分名物の料理や、さんふらわあ名物のカレーなどがいただける。別料金とはなるがアルコールもいただけるのがクルマ旅には無い楽しみだ。もちろん翌日には運転があるのでほどほどにしておきたいところ。
さらに展望大浴場もあるのでゆったりと湯船につかりながら夜の海を眺めることもできる。瀬戸内海を航行するので、波が穏やかなことが多いため揺れが大きくないのもこの航路の特徴だ。
今回乗船したさんふらわあ むらさきは最新のフェリーで、従来からある重油を燃料にしているフェリーではなく、LNGを燃料としており環境に配慮されている。さらに最新船ということもあり揺れや振動がほとんど感じられない。ベッドで寝ていても音や振動が伝わってこないためゆっくりと寝られる。従来のフェリーのように音や振動を気にしている方もいるかもしれないが、昔の船とは全く違うのを感じられる。
瀬戸内海を走っていくため、来島海峡大橋、瀬戸大橋、明石海峡大橋といった瀬戸内海の大きな橋をくぐる通過予想時間も客室のテレビなどで確認できるが、ぐっすり寝てしまっていたため全く見られなかったのは残念だ。
別府~大阪南港は「大阪オートメッセ」への移動にもオススメ
そうこうしていると大阪南港に近づいてくるのと同時に朝食ビュッフェもオープンする。朝食時間の終わりの頃に大阪南港が迫ってくる。この後東京までのロングランを考えればしっかり朝ご飯を食べていた方が良い。道中のどこかで朝ご飯を食べようとしていると、充電との兼ね合いやどこで食べようかと悩んでしまい時間も移動も無駄になってしまうことも考えられる。
いよいよ下船のために車両甲板に行くと充電器がまだ点滅している。まだ充電していたが接続を解除して車内の充電量を確認すると、92%となっており惜しくも100%に届かなかった。しかし92%充電されていて353km走行できるとなっていれば何も問題は無いだろう。
大阪南港といえば毎年2月に大阪オートメッセが開催されるインテックス大阪とほぼ直結の場所。自車を持ってくるのも良いが、人だけ乗船してフェリー移動をして、大阪オートメッセを堪能してまた別府に戻る、ということもできるわけだ。九州方面からの来場に使える交通手段ということもわかった。ぜひ皆さん活用してみてください。
大阪から東京までは2回の充電でラクラク帰還
さて大阪南港を走行可能距離92%・353kmで出発できればあとは楽々だ。名阪国道・新名神・伊勢湾岸道・新東名と繋いで浜松SAまで走り18%・72kmまで使い切ったが、150kW充電器で充電すれば79%・311kmまで復活する。次に海老名SAに着いた時は21%・82kmになっているが90kwで充電を行い88%・337kmになった。海老名SAは充電渋滞が起きることもあるが、40kW充電器であっても無事に新宿都庁まで帰ることができる。
こうして大阪南港からの帰り道は2回の充電を行ったが無事帰京し、新宿の都庁に着いた時は79%・303kmとなっていた。全行程トータル2175kmを無事に走り切ることができた。
もちろん充電スポットなどは考える必要はあるし計算も必要だ。しかし往路でガソリン車とほぼ同じ時間で走り切ったことを考えれば、BEVだから長距離は行けない、ということはないことは証明できたと思う。
高速道路やフェリーなどを駆使し旅を楽しむ。こういう方法もあるという参考になれば幸いだ。さて次はどのようなチャレンジを行おうか。
※充電器の設置状況は2023年10月現在の取材時の状況です。