待ちに待った納車日だというのに引き返すGT3……
恥ずかしいやら悲しいやら。どうあがいてもムリ。どうする? と思わず声を漏らしていた筆者の様子を心配そうに見ていた担当氏は「解決するまでウチで預りますよ。乗りたい時に来ていただければ出しますから」と優しく声をかけてくれた。いまはそうするしかない。ありがたいと思いながらも泣く泣くキーを渡し、納車から30分もたたないうちにGT3は引き返していった。手もとにはキンキラキンのスパークリングワインだけが残ったのだった。
さて、解決策はあるのか? 考えられるのは以下の3つだ。
【1】入庫できる駐車場を探す
【2】純正フロントリフターを取り付ける(40mmアップ)
【3】アフターマーケットのフロントリフターを取り付ける(60~70mmアップ)
【1】は、屋内保管やスロープの傾斜といった諸条件に合致する駐車場はそう簡単に見つかりそうにない。時間もかかるしランニングコスト面でもあとあとシビれそう。ベストな解決策は【2】と【3】のフロントリフターの装着だろう。
そこで【2】の純正モノを模索するべく、すぐさまポルシェセンターに電話してみた。ところが、サービスにつなげてもらうも「メーカー装着のオプションなので、後付けはできません」との回答が。「サスペンションやリフターの修理交換もあるのでは? なんとかできませんか?」と食い下がるも「いや、当方ではすみませんが対応できません」とバッサリ。海外のケースなども調べてみたが、たしかに純正品の後付けという情報は見つからなかった。
残るは【3】だ。ポルシェ用の社外フロントリフターといえば、ロベルタ、そしてドイツのサスペンションメーカーであるKW、最近はTECHARTもノーズリフトをリリースしている。991GT3用で適合があったのはロベルタ。KW(HLSリフティングシステム)では991GT3用の該当はなしだった(997GT3やGT3以外の991モデルなら適合はある)。TECHARTはまだ取付実績は日本ではないようである。となるとそう、フェラーリなどスーパーカーオーナーからも支持されているロベルタがよさそうであった。
純正よりもメリットは大きい!? ロベルタ製フロントリフター装着を決意
なかば消去法のようになっていたものの、調べていくうちに純正を凌駕するロベルタの性能に次第に惹かれていた。まずそのリフトアップ量だ。純正の40mmに対し、991後期GT3用「ロベルタリフターシステム・エレクトリック(電磁式)」の場合、70mmというリフトの高さを誇っている。すなわち最低地上高は10cmから17cmになるわけだ。
これだけ上がれば十分だ。スピードバンプやスロープ化されていない歩道に面したガソリンスタンドやコンビニ等の駐車場への進入や退出も心配ない。しかも、そのリフトアップのスピードが速いのだ。991時代の純正は油圧式でこれまで出会ったポルシェの場合だと上がり切るまで3~4秒かかる印象だったが、一方ロベルタはエア式でほぼ1秒程度。このスピードもありがたい。ちなみに下げ時間もロベルタは速い。ボタンを押せばプシューという音ともに元に戻る。なお、純正もロベルタもいずれも50km/hに達すると自動的に車高が下がる仕組みを持つ。
でも、さらにロベルタには魅力があるのだった。というのも、もしサスペンションをアフターマーケットの高性能サスに変えたい場合、純正リフターでは構造上取り付けができないのだが(マンタイレーシングのKWサスペンションなど一部は対応しているものもある)、ロベルタ製ならさまざまなサスペンションに対応できるのだ。これは足まわりをさらに仕上げたい向きには大いにメリットあるだろう。もちろんPASMといった、メーカー純正電子制御サスペンションにも問題なく対応している。
それに素材に高強度ジェラルミンなどを使用するほかメンテンスプログラムに10年の保証も付帯するなど、安心度も高い。ただ、お値段がかなり高そうなのである。取付工賃込で純正オプションの倍近くするらしい。くわーっ、予想外のイタイ出費になること必至。またしても大丈夫かオレ?
* * *
ロベルタのリフターってもはやスーパーカーオーナー必須アイテム。定番の感ありますよね。装着したほうがおっさんの身のためだと思いますが、この際、思い切ってダカール仕様にするとか?(笑)
■「役物911長期レポ」連載記事一覧はこちら