ピットで注目を浴びていたホンモノのマシン
去る2023年10月29日に富士スピードウェイを会場として『POWER&TORQUE』という名のイベントが開催され、その中で箱車レーシングカーの走行枠が設けられました。『箱車の祭典2023』と銘打って実施された走行枠に参加していたメルセデス・ベンツ「190E 2.5-16 Evo II DTM」を紹介します。
箱車の祭典とは?
1990年までの純レーシングカーによるClass 1と、1990年までの市販車ベース車両によるClass 2が設定され、前者はGr.CカーやGCカーなど、後者はツーリングカー、TS、ワンメイク車両などが対象となった。
1990年の第13戦から投入されたマシンそのもの
Class 1にエントリーしたメルセデス・ベンツ 190E 2.5-16 Evo II DTMは、その車名にもあるようにDTM(Deutsche Tourenwagen Meisterschaft/ドイツ・ツーリングカー選手権)に参戦していたマシンで、1990年の第13戦、ニュルブルクリンクから投入された車両だ。この時代のツーリングカーレースは、当時主流となっていたグループA規定で行われていた。
1990年シーズンは途中からの参戦となったのでタイトルに届かなかったが、1991年シーズンは190E 2.5-16 Evo II DTMを擁するメルセデス・ベンツがマニュファクチャラータイトルを獲得。ドライバーの顔ぶれをさらに充実させた1992年シーズンは、ドライバーズ、マニュファクチャラーのダブルタイトルを獲得し、ドライバーズタイトルのワンツースリーを独占するという圧倒的な速さをみせた。
オーナーの諸井 猛さんによると、箱車の祭典で走らせたメルセデス・ベンツ 190E 2.5-16 Evo II DTMはエンジンが壊れた状態で10年ぐらい前に譲ってもらったらしく、2.5-16/ボア100mmで新しくパワーユニットを造ったものの、それがいまいちで、1回だけ走行して封印してしまったのだという。
その後、190EのEvoに強いショップがエンジンを持っていることが分かり、譲ってもらい、2年ぐらい前にレーシングエンジンを積むことになったそうだ。 箱車の祭典でメルセデス・ベンツ 190E 2.5-16 Evo II DTMを走らせた感想を諸井さんに伺ってみたら、このように話してくれた。
「朝の走行枠では、タイヤをはじめとする各部に熱が入りませんでした。2回目の走行で調子よくなりましたね。今回、さまざまなクルマが混走しましたが、みんながサーキットに慣れていれば安全で楽しいと思いました」
本物のドイツ・ツーリングカー選手権参戦車なので、走行時はもちろん、ピットでの作業風景までレーシーで、箱車の祭典につめかけたギャラリーたちはその迫力に圧倒されていた。DTMマシンは、なかなか見る機会がないので、今後もレーシングスピードで走り続けてほしいものだ。