ベントレーでいまや復活した熱海の新たなる魅力を求めて
AMWがベントレーで訪ねる「美」と「食」を巡る旅。眩しい陽光に包まれた海岸沿いの道を一路、静岡県熱海へ。「熱海パールスターホテル」でカウンター越しに水平線を遠く眺めながら、地元の海産物を使った旨い鮨を堪能します。
ラグジュアリーSUVに一石を投じるモデル
それまでしっとりとしていたローズゴールドのボディに輝きが走った。車庫からベンテイガ EWB アズールを表に出した時のことだ。降車して眺めると陽光を受けたその彫刻的なボディは煌めき、縦格子のグリルが輝きを放つ。磨きこまれた漆器のように深い艶を持つ塗装は、ベントレーの熟練した職人と最新のテクノロジーのなせる技だろう。
華やかで、美しく、そして上品だ。手の込んだ工芸品を眺めていているようで飽きない。この銅と金の顔料を使ったローズゴールドは、遊び心あるような色合でありながらとてもエレガント。威風堂々としたベンテイガにどこかやわらかな印象をも与え、女性ドライバーにもウケそうな色である。
そういえばベントレーのカラーバリエーションはメーカー随一とされるほど豊富。最近になってカスタマイズ部門のマリナーがクラシックなヘリテージカラーを復活させてさらに追加となっているが、美しい色が多いだけに、機能的な仕様以上に色選びは悩むところだろう。
今回借り出したベンテイガ EWB アズールの「EWB」とはExtended Wheel Baseのことである。ホイールベースをベンテイガの2995mmから180mm延長し、3175mmとしたモデルだ。全長は5150mmから5305mmへと長くなり、それに伴い後部座席のドアも長くなっているのだが、ストレッチモデルのような間延び感は全くない。
入念にデザインされたのだろう、プロポーションも非常によくまとまっている。大きくなった後部の窓はかつてのフラッグシップで4ドアセダンモデルだった「ミュルザンヌ」を彷彿とさせ、故エリザベス女王陛下がひょっこりと窓から顔を覗かせているお姿が思い出される。
また、「アズール」はラインナップの中でも、目的地に到着した時も心身ともに心地よくあるようウェルビーイングにフォーカスした仕様で、ラグジュアリーであることはもちろん快適性にも徹底してこだわった特別な空間と独自のウェルネス機能を装備する。
その機能の充実ぶりは目を見張るものがある。前席にはコンフォートヘッドレストと20段階の電動調整機能、シートヒーターとベンチレーターさらにはマッサージ機能などを備えた「フロントシート コンフォート スペシフィケーション」が組み込まれ、ホイールベース延長に伴いとてつもなく広がった後席には、オプションの「エアライン・シート・スペシフィケーション」を備える。後席は2座+1のレイアウトだ。
シートは22段階調整可能でリクライニング角度は最大40°まで拡大され、前席背面側にフットレストや小ぶりなデスクも装備する。さらには世界初採用という車内温度をきめ細かく管理する「オートクライメートシステム」と乗員の着座位置やツボを自動で定期的に微小調整する「姿勢調整システム」も搭載するなど、心的にも肉体的にも乗員の疲労を軽減する機能が満載なのだ。
運転は時としてストレスがかかるものだし、こうした疲労回復につながるウェルネスな機能は長距離ドライブにもうってつけだ。街中を乗り回すだけではもったいない仕様なのだ。
SUVの優しき王者、「ベンテイガ EWB」
思えば、いまやSUVは百花繚乱。ラグジュアリークラスではハイパフォーマンスさや豪華さを押し出したモデルが目立つ。動力的に高い性能も大事な要素だが、真にドライブを楽しむ上でも、旅や移動を特別で快適なものにする上でも、ウェルビーイングな機能や装備には大きな価値がある。先んじて展開するベントレー、そのフラッグシップとなったベンテイガ EWB アズールは、これからのラグジュアリーSUVに一石を投じるモデルに思えてならない。
しかも、決して運動性が他車に劣っているわけでもない。たしかに後席の快適性を高めるためにホイールベース延長したベンテイガ EWBは、その豪華さと相まってショーファードリブンカーとしても立派にその役目を果たすに違いないが、そこはドライバーズカーとしての魅力を訴求してきたベントレーである。走る楽しさ、操る楽しさもしっかり押さえているのはいうまでもない。
搭載するエンジンは4リッターV8ツインターボエンジン。404kW(550ps)のパワーと770Nmのトルクを発生し、8速ATを組み合わせ4輪で駆動する。最高速度は290km/h、0-100km/h加速はわずか4.6秒とスポーツカー並みに俊足だ。しかも、ベンテイガ EWB アズールは、コーナリング時にキャビンをできる限り水平に保ち、高速走行時などの振動や段差による衝撃を軽減する「ベントレーダイナミックライド」や後輪操舵システムを標準装備する。そう、移動自体も快適で楽しいクルマなのだ。