V8エンジンの生産が2023年をもって終了
マセラティ向けにフェラーリが供給していたV8エンジンの生産が2023年をもって終了しました。限定モデルを含めた、最後のV8エンジンを搭載する「ギブリ」「レヴァンテ」「クアトロポルテ」に北イタリアで雪上試乗。一抹の寂しさと共に、半端なく大きなエンジンの熱量を感じてきました。
マラネッロ製V8エンジンはこれが最後
マセラティ向けにマラネッロ(=フェラーリ)が供給していたV8エンジンの生産がついに2023年12月をもって終了した。納入されたエンジンのあるかぎり、マセラティのV8モデル(ギブリ、レヴァンテ、クアトロポルテ)は生産されるけれども、おそらく24年中にはそれらの販売も終了することだろう。後に詳述するけれども、2023年のグッドウッドでは“最後のV8”を記念するギブリとレヴァンテの限定車も登場している。
マセラティ製のV8モデルとして最初に登場したのは幻の名車5000GT(ティーポ103)だ。フェラーリの高級グラントゥーリズモと変わらぬ超高級車で、幻と言われる所以は60年代初頭にかけてわずか34台しか生産されなかったため。戦前から熱心にモータースポーツ活動を続けてきた高級車メーカー・マセラティにとって、その時まだフェラーリは戦後に現れたポッと出の新興メーカーにすぎなかった。そんな老舗も紆余曲折あって90年代末にはフェラーリ傘下となってV8エンジンを供給されるように。歴史の皮肉というものであろう。
最後となったマラネッロ製V8エンジンは13年からギブリやクアトロポルテに搭載された3.8リッターツインターボで、型式名こそF154とフェラーリ用モデルと同じながら、クランクシャフトはフラットプレーン式ではなくクロスプレーン式、潤滑システムもドライサンプではなくウェットサンプだ。
マセラティは今後、自社開発したV6エンジンのネットゥーノとフルバッテリー駆動を主軸にモデル展開していくと見られており、V8エンジンを積んだ市販ロードカーは今買えるクアトロポルテ、ギブリ、レヴァンテが最後になりそうだ。
なかでも注目は最終限定車として登場したギブリ334ウルティマとレヴァンテV8ウルティマで、前者は世界限定103台(ペルシャブルー)、後者はネロ・アッソルト(黒)とブルー・ロワイアル(青)の2色でそれぞれ103台ずつ計206台だ。
ちなみに103という数字は5000GTのプロジェクト名であり、34は生産台数、そしてギブリのペルシャブルーは5000GTのコンセプト(レース用V8エンジンを積んだ豪華なGTカー)を考え最初にオーダーしたイラン国王の1号車にちなんだボディカラーだ。334はセダン最速となる最高速度334km/hのWミーニングでもある。