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欧州車のホイールが真っ黒は過去の話! 高性能ブレーキでもパッド次第で汚れません【Key’s note】

ディクセルから発売されている低ダストと制動力を両立したモデル

真っ黒に汚れたホイールは高性能ブレーキ装着車の証だった

レーシングドライバーであり自動車評論家でもある木下隆之が、いま気になる「key word」から徒然なるままに語る「Key’s note」。今回のキーワードは「ブレーキダスト」です。とくに欧州車は、ブレーキダストでホイールが真っ黒な状態になっているクルマも多いです。そんな定説が、覆されたと木下さん。自身の経験を交えて語ります。

今では低ダストと制動力の高さは両立できる

これまで数多くのクルマを所有してきました。その多くは日本車が占めていたのですが、ドイツ車も少なくありません。レーシングドライバーという特殊な職業柄、クルマには高い性能を求めます。ですから自然と性能の高さで知られたドイツ車を選んでしまうのでしょう。

ただし、苦労させられることがあります。一般的にドイツ車は日本車よりもホイールが汚れる傾向にあります。ボディが汚れるよりも早くホイールが黒ずむことがあり閉口してしまうのです。

洗車するたびにホイールをブラシで洗浄します。さすがに歯ブラシで磨くほどの凝り症ではありませんが、せっかくの愛車の足元が黒ずんでいるのは気持ちのよいものではありませんよね。

ですが、それもどこかで納得してもいました。というのも、ホイールがダストで汚れるのは、ブレーキ性能が高いからだと信じてきたからです。

制動力は、ブレーキバッドがブレーキローターに押しつけられたときに発生する摩擦力に依存します。その際、パッドはローターを削りながら摩擦力を発生。その削られたダストがホイールに付着し、黒ずみとなるのです。

そしてダストの量と制動力は比例関係にあると考えられてきました。高速社会であるドイツでは、高性能なブレーキが求められます。200km/hオーバーから急制動する場面も少なくないからです。高性能であるがゆえに、ローターへの攻撃性が強くなります。汚れが早く進むのはブレーキ性能が高いからこその代償であり、言葉を変えれば勲章でもあったのです。

ただし、それも過去の話になりつつあります。というのも、先日「低ダストブレーキ」というキャッチフレーズに吸い寄せられ、日本の大手ブレーキメーカーであるディクセル製のブレーキパッドとローターに交換してみて考えを改めたのです。

マイカーはドイツ車です。購入してから8年が経過しており、走行距離も嵩んでいました。車検を取得しようとした際にブレーキパッドとローターの消耗が激しいことを指摘され、ディクセル製へ交換することになったのです。

交換後は驚くほどに、ブレーキダストがほとんど発生しません。これまでは約300km毎にホイールを洗浄していましたが、1000km走行しても汚れは目立ちません。写真は1000km走行後のホイールそのものです。これから先、数1000kmはホイールを洗うことなく過ごせそうなのです。その頃にはボディがひどく汚れているかもしれませんね。

ディクセル製がブレーキダストを発生しない原理は、塗膜にあるそうです。バッドとローターの間に膜を作ることで、膜と膜が吸着効果を生みます。これまでは、スパイクタイヤが氷に爪を立てながら制動しているのと同様に、ローターを削りながら摩擦力を発生していました。

しかし、低ダストブレーキはスノータイヤのコンパウンドと氷が吸着するような原理ですから、低ダストだけではなく制動力も高いので安心ですね。赤信号で停止する直前の、速度がゼロになる瞬間に減速Gがスーッと消えていく感覚も秀逸で、カックンとなりづらいのです。これまで常識とされてきた、高性能ブレーキ装着車のホイールはすぐ汚れるという定説は覆されました。

ちなみに、ダストを撒き散らさないことは環境にも貢献します。ホイールを洗剤で洗うこともほとんどなくなることも環境との親和性があり、SDGsに貢献するのです。

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