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軽自動車で争う「東北660選手権」がどうして若者に支持されるのか? 22歳のウィナーを例に説明します

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TEXT: 佐藤 圭(SATO Kei)  PHOTO: 佐藤 圭(SATO Kei)

  • 大平選手
  • 雨のレースを制したことで実力が本物であると証明した大平選手。3クラスのシリーズランキングも大健闘の2番手でシーズンを終えた
  • 吸排気系くらいしかチューニングが許されない3クラス。エンジンも特にオーバーホールなどはせず、中古車で買ったときのまま走っている
  • 最近のトレンドは純正エアクリーナーボックスに社外フィルターの組み合わせ。耐熱布を貼ればエンジンの熱にも影響されにくくなる
  • 軽量ながら必要にして十分な電圧を供給できる小型バッテリー。改造範囲が限られれているからこそ、小さなことの積み重ねが大切だ
  • 定番のバンパーカット。長いストレートがふたつ存在するSUGOでは、リヤバンパー内部の空気を効率よく抜くことも重要だと考える
  • レギュレーションで定められたロールケージを組み、内装パーツは可能な限り取り外し軽量化している。大型のタコメーターも装着
  • バケットシートはブリッド。HPIの6点式シートベルトは安全性はモチロン、ボディカラーとのコーディネイトを考えて選んだという
  • セカンドグレードのラジアルは適度なグリップで、タイヤに頼りすぎないドライビングが身に付く。定番のブリヂストン ポテンザアドレナリンRE004を使用
  • 開幕戦の前日に凹ませたリヤクオーター。仲間が貼ってくれたカッティングを1日でダメにしたのが、精神的にイチバン辛かったと話す
  • 五葉選手と松村選手を交えたバトル。滑る路面に神経を使いながら後続を抑えるには、テクニックだけじゃなく精神力も不可欠だろう
  • 最終戦で記念すべき初優勝。いつもながら3クラスの表彰台は若者が多い。これぞ設立したときから目指していた3クラス本来の姿だ
  • 大平崇文選手。大勢の仲間やライバルがあってこそ、レースを楽しめるし成長もできる。先に2クラスへ上がった先輩たちからのラブコールも激しい

3クラス制覇か2クラスへのステップアップか

新規格NAの軽自動車によるスプリントレースとして、2023年で13回目のシーズンを迎えた東北660選手権。なかでも最大の激戦区3クラスは改造範囲を狭めてコストを抑えているほか、表彰台の獲得が一定数に達したドライバーはエントリーできないなど、毎年のように新しいヒーローが誕生する東北660選手権の登竜門だ。今回は2024年4月14日(日)に行われる開幕戦の前に、2023年に活躍し2024年シーズンでの躍進が期待されれる大平崇文選手を紹介しよう。

親戚の影響でレースに興味を持った

2023年も開幕戦で優勝の西沢拓真選手やシリーズを制した岩塚眞澄選手ら、初参戦から数年を経て開花するドライバーは枚挙にいとまがない。そして10月15日にエビスサーキットの西コースで行なわれた最終戦では、弱冠22歳という大平崇文選手が念願の初優勝を遂げた。

表彰台を獲得した大平選手

東北660選手権にデビューしたのは2021年、1時間のセミ耐久レースである特別戦。親戚が日本大学工学部の自動車部で活動しており、その影響でサーキットやレースに興味を持ったそうだ。

初めての愛車であるスズキ「アルトワークス」はエンジンブローで失ったが、次にL275型ダイハツ「ミラ」を購入したことで東北660ワールドへ足を踏み入れる。本格的にサーキットを走り始めたのは2台目のL275ミラからで、オートリサーチ米沢にて3クラス仕様に仕上げてもらったという。

初めてのレースは緊張もあったが楽しさはそれを上まわり、翌2022年から本格的に参戦し経験を積み上げていく。開幕戦こそビギナー専用の5クラスだったが、次戦からは自主的に3クラスへとステップアップする。いずれも上位に食い込み「来年のヒーローは彼か?」と予感を抱かせたが、2023年シーズンは開幕戦の前日にクラッシュするというアクシデントに見舞われた。

リアガラスまで割れる大きなダメージを負い一時はリタイヤを覚悟するも、オートリサーチ米沢のデモカーから外装パーツを借り夜を徹して修復し、リヤクオーターは痛々しく凹んでいたが決勝を走り切り8位でフィニッシュした。

クラッシュを乗り越え好成績を残していく

事故のトラウマがまだ癒えていないと思われた第2戦では2位、第3戦こそ5位で終わったが第4戦では見事ポール・トゥ・ウィンを決めた。朝からのヘビーウェットという悪条件に加え、自身が「実力は彼のほうが上です」と認める五葉風雅選手、さらに同じ5クラスから上がった松村幸哉選手に猛追されるなか、10ラップを抑え切ったのは精神的な部分もタフになった証拠だろう。

そんな大平選手だが2024年は3クラスでシリーズ制覇が目標と思いきや、2クラスへのステップアップも視野に入れているとのこと。日ごろから「楽しくなけりゃ意味がない」を座右の銘とする大平選手にとって、より強いライバルたちと競える2クラスは楽しいことは当然として、ドライバーとしてさらに成長を遂げられるステージだという。

自分自身がどっぷりハマっている軽自動車は、維持費を含めローコストで若者でも所有しやすく、ローパワーがゆえに難しさと面白さが同居する素材。大平選手は「自分たちがAE86などの世代に憧れを抱いているように、数十年後の若者のとってミラやアルトが同じ存在になると思います」と話す。

そして東北660シリーズに共通する最大の魅力は、とにかく人がみんな温かいことだと言い切る。「レースが非常にクリーンで接触などがあれば走行後にキチンと謝ったり、トラブルには敵味方の関係なくパーツを貸したり手伝うのが当たり前。だからドライバー同士がライバルとして高め合うだけじゃなく、レベルの高い草レースとして発展し続けているんだと思います」とも。

最後にこれから参戦を考えている人に、自身の経験を顧みつつアドバイスしてもらった。軽自動車とはいえ『レース』という単語にはハードルの高さがあり、大平選手も以前は同じように感じていたそうだ。しかし、レースと同日に開催される練習会や、ビギナー限定の5クラスがあることで、少しずつ馴染んでいけるのは大きな魅力。走りは熱いながらもパドックではフレンドリー、そして困っている人はみんなでサポートする。そんな東北660イズムを体現したかのような大平選手、2024年シーズンはさらなる飛躍の年になるに違いない!

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  • 佐藤 圭(SATO Kei)
  • 佐藤 圭(SATO Kei)
  • 1974年生まれ。学生時代は自動車部でクルマ遊びにハマりすぎて留年し、卒業後はチューニング誌の編集部に潜り込む。2005年からフリーランスとなり原稿執筆と写真撮影を柱にしつつ、レース参戦の経験を活かしサーキットのイベント運営も手がける。ライフワークはアメリカの国立公園とルート66の旅、エアショー巡りで1年のうち1~2ヶ月は現地に滞在。国内では森の奥にタイニーハウスを建て、オフグリッドな暮らしを満喫している。
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